U-BOYです。
Boenicke Audioの小型スピーカー、W5 MK2 SE+をお借りすることができましたので試聴レポートさせていただきます。

高さ29.3cm、幅10.4cm、奥行23.1cm、重量約3.5kg。筐体容積はわずか2.8L。
数字だけ見ればごく小さなブックシェルフですが、内部は複雑な構造を持っており、このサイズのスピーカーとは思えないスケールの大きな音がします。
W5 MK2 SE+の特徴
録音現場を基準にした設計
設計者スヴェン・ボーニックは、20年をかけて300近い会場で録音を手がけてきた人物です。コンサートホール、教会などいずれも実在の建物であり、彼は常に演奏の音場の中に身を置いてきました。
リファレンスは測定データではなく、実体験に基づく生楽器の音そのもの。同社は「オリジナルの90%あたりに届けば満足だ」と言い、そしてその数値を「多くのプロが馬鹿げた幻想と切り捨てるだろう」とも語っています。
同社は世の中のスピーカーを3つにグレードに分類しています。
MDFにフォーム吸音材、ドームツイーター、標準的なクロスオーバーという再発明の繰り返しが第1のカテゴリー。
筐体素材や方式に独自性を持たせたものが第2。
そして信号経路・筐体・ドライバーに他社がやらない要素を能動的に加えるものが第3。この第3に当てはまるのは自社だけだ、というのが同社の主張です。
ずいぶんな言い草ではありますが、それだけ自信があることがうかがえます。
無垢材から削り出される複雑な構造

キャビネットは無垢材のみ。ウォルナット、4種のオーク、アッシュ、コアアッシュ、チェリーから選べます。
内部は高度なアコースティック理論に基づく複雑な形状で、スイス製CNCマシンによって時間をかけて切削されています。定在波を遮断するため、ドライバーはすべて内部で仕切られる構造。
ベースドライバー用のバスレフダクトは、超低域まで開放的に鳴らすための形状で、容積2.8Lからは想像しにくい低域は、ここに負うところが大きいはずです。
ユニット構成は、フロントに3インチのワイドバンドドライバー、側面に5インチのロングストローク・ウーファー、背面にアンビエント・リアトゥイーター。
ワイドバンダーには熱処理されたフェーズプラグを備えた新型が奢られ、1次ハイパスのみで受けます。ベースドライバーは50Hzにチューンされ、クロスオーバーを介さず駆動される仕様。
背面のリアトゥイーターは、空間の広がりと音像の解像に効いてくる部分で、スケール感に寄与していると思われます。
レゾネーターとグレード差
Boenickeおなじみの振動制御デバイス、エレクトロメカニカルレゾネーター。ドライバーの磁気回路に直接作用し、微細な振動と電磁ノイズを整えます。グレードによって数と構成が変わります。
Standardはワイドバンダーにパラレルレゾネーターを1基。
SEではベースドライバーにもパラレルレゾネーターが追加され、両ドライバーのマグネットにスパイラルレゾネーターが装着されました。コンデンサーにはMundorf Silver-Gold-Oil、そしてDuelundのバイパスコンデンサー。
今回お借りしたSE+では、さらに全ドライバーに直列レゾネーターが加わり、パラレルとシリーズの両方が動員されます。ワイドバンダーはドイツAERの手作業組み立て品となり、そのマグネットにはHarmonix RF-5700チューニングベース。
加えて、レジスターとキャパシターで構成される独自のフェーズリニアリゼーション・ネットワークを搭載。位相補正によって奥行きが深まり、サ行の音が自然になる、というのがメーカーの説明です。
ターミナルはMK2から新型のTTN(Terminal Tightening Nuts)へ。金属ナットとCNC加工されたチェリーウッドの締め付けナットの組み合わせで、接触抵抗と音響的ロスの低減を狙ったもの。金属ナットの材質は、Standardが銅、SE/SE+が銀となります。
筐体とドライバーの基本構成は共通で、差は振動制御と信号経路に集約されている、という理解でよさそうです。
実際に聴いた印象
当店では以前、W5 MK1のStandardを常設していた時期があります。
今回はMK2の最上位、SE+。世代もグレードも異なるため単純な比較にはなりませんが、それでも新世代モデルの進化はよくわかりました。
まず驚かされるのは、このサイズのスピーカーが鳴っているとは思えない低域の充実ぶり。厚みと量感はサイズをまるで感じさせず、朗々と鳴ります。以前のモデルと比べても、厚みが違います。
それでいて音の収束が早いのでこもらない。量感のあるスピーカーが陥りがちな、輪郭の曖昧さや残響の尾を引く感じとは無縁です。
中低域の支えも、明らかに以前より確かになっていました。腰の据わり方が違うと言えばよいでしょうか。
レゾネーターの強化、AERのワイドバンダー、フェーズリニアリゼーション・ネットワーク、どれがどう作用しているのかは想像するしかないですが、結果として音の土台は着実に厚くなっています。
空間表現も優秀で広いです。スピーカーの存在が視界から消えるような描き方をします。SEおよびSE+のグレードの違いは位相管理による空間表現の正確さに寄与します。
小型で、能率の低いスピーカーです。
公称インピーダンスは4Ω。アンプにはある程度の駆動力が求められます。店頭ではMcIntosh MA8950プリメインで鳴らしていますが、アンプをおごるほどそれに追従するポテンシャルのあるスピーカーです。
注意点もいくつか。
背面にレゾネーターを備える構造上、そして音場の出方を考えても、スピーカーの周囲にはできるだけ物がないほうがよいです。ポン置きでもある程度は鳴りますが、追い込んだ分だけ応えてくれる素直さがあります。
そして、サイズを感じさせない朗々とした鳴り方をするので、つい音量を上げたくなります。ただし超大音量では、ウーファーがボトミングを起こすことが稀にありました。
どのスピーカーにも相応の限界はありますし、他のブックシェルフに比べて音量が出せない、という意味ではありません。そもそも当店のような環境でなければ、ここまでの音量を出す機会自体が少ないはずです。
こんな方におすすめです
- 設置スペースは限られるが、音場の広さは妥協したくない方
- 無垢材の質感を、音とインテリアの両面で求める方
- 設置に手をかけられる方
- 駆動力のあるアンプをすでにお持ちの方
ご興味のある方はお気軽にご相談ください。

