U-BOYです。
ソナス・ファベールから、ブランドの歴史においても重要な位置を占める「Concertino」の名を受け継ぐ第4世代モデル、「Concertino G4」が登場しました。
このモデルは、ソナス・ファベールの伝統的な世界観を現代に継承する「Heritage」ラインに位置づけられています。美しい佇まいは、まさにソナス・ファベールならではです。

サウンドを支える革新技術
Concertino G4のサウンドを語る上で欠かせないのが、最上位モデル「Suprema」などから惜しみなく投入された最新技術です。見た目の美しさだけでなく、その内側には音質を追求するための明確な設計思想がありました。
キャビネットの常識を変える「コルク」の採用

今回、技術的に最も注目すべき点は、ソナス・ファベール史上初となる「コルク」をキャビネットの主要構造に採用した点です。なぜ、コルクなのでしょうか。
コルクは、素材そのものの共振が極めて少なく、優れた吸音特性を持っています。これにより、従来は必須だった内部の吸音材を最小限に抑えることが可能になりました。結果として、ドライバーユニットは余計な制動(ブレーキ)がかからない理想的な環境で駆動でき、これが解像度の向上と、立ち上がりの速いレスポンスの良いサウンドに直結しています。後述しますが、この特性がConcertino G4の際立った「静けさ」に大きく貢献しています。
伝統と革新が融合したドライバーユニット
スピーカーの心臓部であるドライバーユニットにも、ソナス・ファベールのこだわりが凝縮されています。
高域:アローポイントDAD™ ツィーター

ブランドの代名詞とも言える28mmのシルク・ソフトドーム型ツィーターです。この独自技術は、ソフトドームの頂点をダンピングすることで不要な逆相挙動を抑え、音の透明度と広がりを両立させています。
中低域:Organic Basket採用ウーファー


135mmのカスタムメイド・ウーファーには、こちらも最上位モデル譲りの「Organic Basket」が採用されています。この有機的な非対称形状のバスケットが、ダイアフラムの動作によって生じる不要な振動を効果的に分散させ、濁りのないクリアなサウンドに大きく貢献しています。
「静けさ」と、ふくよかな「響き」の共存

今回、メーカー指定の通りスピーカーを内振りにして試聴を開始しました。
まず感じたのは、定位の正確さと、スピーカーのサイズを超える空間表現力の高さです。音が出た瞬間、目の前にスッと立体的なステージが広がり、演奏者の位置関係が手に取るように分かります。
そして、聴き進めるうちに、このスピーカーが持つ非凡な特徴に気づかされました。それは、「音の立ち消えの速さ」と、それによってもたらされる「静けさ」です。
これがコルク製キャビネットの恩恵なのでしょう。音と音の間の静寂が際立ち、録音に含まれる微細な暗騒音まで正確に描き出します。
低域については、ブックシェルフ型としてサイズなりにまとめられており、量感で圧倒するタイプではありません。しかし、中低域には独特の厚みがあり、この「ふくよかさ」と、先ほど述べた「静けさ」が見事に共存している点が、Concertino G4最大の魅力と言えます。
このふくよかな中低域が、ボーカルや弦楽器に温かみと実在感を与えてくれます。それでいて、音の輪郭は決してぼやけず、静寂の中に豊かな響きが浮かび上がる。この静と動のコントラストこそ、ソナス・ファベールが「Heritage」ラインで表現したかった世界観なのかもしれません。
30周年記念の特別な一台。「Maestro Edition」について
Concertino G4には、初回生産分のみ世界で300ペア(うち国内30ペア)限定となる特別な「Maestro Edition」が用意されています。

天地板が独立したレザー貼り

真鍮プレート

音質の基本性能は同一ですが、所有する喜びをさらに高めてくれる特別な仕上げや特典が異なります。今回、標準仕様との違いを表にまとめました。
比較項目 | Maestro Edition (限定生産) | 標準仕様 |
希望小売価格 (税込) | 814,000円 | 759,000円 |
限定生産数 | 世界300ペア (国内30ペア) | 限定なし |
リア・バスレフポート | 木製 (ウォルナット無垢材) | 樹脂製 |
レザーの貼り方 | 天地、フロントが独立 (各パーツごとに境目がある) | 天地、フロントがワンピース (各パーツの境目がない) |
サイドプレート | シリアルナンバー入り真鍮プレート | 付属なし |
付属アートワーク | デザイナー直筆サイン入り版画 | 付属なし |
専用スタンド「Stand Iron G2」について


Concertino G4の性能を最大限に引き出すために、オプションで専用スタンド「Stand Iron G2」が用意されています。
スタンド側面には本体と同じウォルナット突板が施されており、組み合わせることでデザインの統一感が生まれます。それだけでなく、鉄製のしっかりとした作りで剛性が高く、床からの不要な振動を排してスピーカーの性能を余すところなく引き出してくれます。
設置方法について、一点ご注意いただきたい点があります。 Concertino G4本体は、キャビネット構造にコルクを採用しているためネジ切りができず、底面にネジ穴がありません。そのため、スタンドとネジで固定することはできず、スピーカー底面のゴム足をスタンド天板にあるくぼみにはめ込む形で設置します。
デザインと性能の両面から、セットでのご使用をおすすめします。
まとめ
ソナス・ファベールが持つ伝統的な音楽性と、コルクという最先端の技術が生み出す静寂感。この本来であれば相反する二つの要素を、見事なバランスで両立させた素晴らしいスピーカーです。
「静寂の中に浮かび上がる、楽器や声の豊かな響きをじっくりと味わいたい」と考える方に、心からおすすめできます。特に、ボーカルや弦楽器、ピアノといったアコースティックな音源をメインに聴かれる方であれば、その真価を存分に感じていただけることでしょう。
技術的な裏付けと、実際のサウンドが見事に一致した、非常に完成度の高い一作です。ご興味がある方はお気軽にご相談ください。
