U-BOYです。
オランダ、Grimm Audio(グリムオーディオ)のMU2をお借りしましたので、試聴レポートします。
MU1とMU2について
先に発売されていたMU1は同社のアクティブスピーカーLS1を使うことを前提としていますが、AES-EBUなどのデジタル出力がありますので、他社のD/Aコンバーターと接続も可能です。
MU2はアナログ出力を搭載したプレーヤー仕様です。こちらは、自社製DACを使うのが前提で、デジタル出力はありません。アナログの入出力も備えていますので、純粋なプリアンプとしても使用できます。
webブラウザ上で各種設定ができます。
ボリュームの可変/固定、使う(使わない)入力の選択、ディスプレイの表示など。
マニュアルが無くても特に操作で困ることはありませんでした。
MU1とMU2の違い
MU1
MU2
- seamless integration with LS1 series
- excellent source for 3rd party DACs
- surround playback option with 6 digital output channels
- AES, spdif and optical digital stereo inputs
- FPGA based discrete Major DAC
- relay based analog volume control
- digital AES, spdif and optical inputs
- analog XLR and RCA inputs
- analog XLR and RCA outputs
- headphone output
MU1とMU2はRoon Serverであること、ultra low clock jitterを採用していることなど、基本設計は同じですが、トランスポートと、D/Aコンバーターという違いがあります。
MU2について
ここからは、MU2を中心にレポートします。
MU1とMU2には、どちらもRoon Serverです。Roonを使うにあたり、別のコンピューターを必要としません。また、ストレージも内蔵していますので、本体に音源を格納できます。
MU2には、純粋なアナログボリュームも搭載し、各種デジタル入力とは別に、アナログ入力も備えているため、完全なプリアンプとしても使用できます。
このボリュームは、Roonのボリュームと連動して使用可能で、別のプリを使う場合は、固定もできます。
可変ボリューム時の最大ボリュームは、+8dBです。Roonのボリュームでいうと、最大100の時に+8dBであり、92の時がFIXと同じ出力です。
‘Major DAC’とは?
現時点で、手元には資料も無いので、本国サイトに明記されている範囲で解説します。
参考: The MU2 ‘Major DAC’
Major DAC’は、FPGAの専用DACプリプロセッシングと独自のディスクリートDACハードウェアを最適に組み合わせた独自のD/Aコンバーターです。
既存の技術は、マルチビット変換、シングルビット(ビットストリーム)変換、またはパルス幅変調(PWM)変換と呼ばれるこれら組み合わせのいずれかを使用していますが、それぞれに得手不得手があります。
MU2 ‘Major DAC’は、これらの選択肢の最適な中間点に位置する、1.5ビット・アーキテクチャを採用しています。
1.5ビットの値が「PWMスタイル」の1ビットD/Aセルで表現されるため、振幅直線性が保証されます。PWM DACと同様に、ノイズ・シェイパーは実質的に一定の効率で動作しており、ダイナミック・レンジ全体にわたってリニアな動作を実現しています。
これでも広範な処理能力を必要としますが、無駄のない1.5ビット・アーキテクチャのおかげで、強力なFPGAで理想的な変換をすることができます。
‘Major DAC’に実装されたソリューションは、ノイズ・シェイパーのエラーゼロ動作を実現し、1.5ビットDACの選択は、高度に最適化された独自の11次(!)ノイズ・シェイパーを可能とし、安定したノイズ・シェイピング動作を提供します。
結果として生じる強力な高周波ノイズを、アナログ信号経路に入る前にフィルターするために、いわゆるFIR DACトポロジーが採用され、各チャンネルにつき16個のDACセルが使用されています。ノイズ・シェイパーの入力には、ベース・レートの128倍で動作する極めて高精度な “ピュア・ナイキスト “デジタルFPGAフィルターが使用されています。
これらの対策により、’Major DAC’は、これまでに聴いたことのないようなオーディオの微細なディテールを再現することができるそうです。
DAC出力信号の美しさと透明性を保つため、アナログ信号経路にも特別な注意が払われており、アナログ信号経路は、非常に高品質な回路、部品、レイアウトを使用して完全に対称的に実装されています。
上の図は、0dB、-40dB、-80dBの3つのオーディオレベルでの7次ワンビットノイズシェイパー(左)とMU2の11次メジャーDACノイズシェイパー(右)の高周波スペクトラルです。
MU2の1.5ビットノイズシェイパーのスペクトルが常に安定しているのに対し、1ビットの場合、高周波スペクトルが信号強度にわずかに依存していることがわかります。これは、オーディオ帯域における高い直線性につながります。
音質について
実際に、Roonを使って再生しました。
音源は、MU2内のSSDに格納し、ボリュームは固定しプリアンプへ接続しています。
グリムオーディオのクロックを使ったことがある人ならわかると思いますが、MU2も同様で、とても丁寧で落ち着いた音です。
固有の音色は持たずに、とても素直です。
フォーマットとしては、DSD256、PCM384kHz、MQAにまで対応しています。
プレーヤーとしてBartok APEX DACと比較
まず、プレーヤーとしての能力を確認するため、Bartok APEX DACと比較しました。
MU2はRoon Server兼用です。
MU2単体と、MU2(Roon Server)→ Bartok APEX DACでの比較です。
MU2のDACは、落ち着いて静かな描写です。BartokもAPEX DACとなり静けさがかなり増しましたが、MU2の方がより静かで落ち着いています。Bartokの方が音に張りがあり、低音もMU2よりもしっかり沈み込みます。
Roon ServerとしてEdiscreation BACH JP MODELと比較
次に、DACをBartok APEX DACに固定し、Roon ServerとしてMU2を使用した場合とBACH JP MODELを使用した場合で比較しました。
どちらも外部ストレージは使わず、内蔵のSSDに格納した音源や、Tidal/Qobuzのストリーミングでの比較です。接続はイーサネットです。
この場合も、MU2は落ち着いた音であるのに対して、Bachは肉厚で濃い音に変化しました。
どちらもRoon Serverとして質の高い製品です。
アナログのような音というと、イメージする音は人それぞれ違うと思いますが、MU2はうるさい感じがなく、落ち着いていてとても静かな音、Bachは濃くてリッチな音です。世界観は違いますが、どちらもデジタルっぽい音ではありません。
まとめ
良質なRoon Serverに、良質なクロック、オリジナルのMajor DAC(MU2のみ)を搭載した内容、音質を考慮すると、注目に値する製品です。