YG Acoustics Hailey 3.2試聴レポート

U-BOYです。

YG Acoustics Hailey 3.2 をお借りしました。
上位モデルのSonja 3.2のレポートもご覧下さい。

あわせて読みたい
YG Acoustics Sonja 3.2を試聴しました YG Acoustics Sonja 3.2試聴レポート。トゥイーターを新開発したほか、ネットワークも再設計、クロスオーバー周波数も再検討し大きくアップデート。様々な音源への対応力が向上しました。


YG Acoustics Hailey 3.2について

画像
ほぼ新品卸したてで、エージングも頼まれたので、1週間ランニングしてから試聴に挑みました。

YG Acoustics社は、2020年のマシュー・ウェブスターCEO就任以降、長年追求してきた音響的観点からの高性能化に加えて、いわゆる「音楽性」を新たな優先事項として掲げるようになりました 。

高密度レジンファイバー製のエンクロージャーを採用したPeaksシリーズもその傾向を強く感じます。
前モデルとの違いは、以前に紹介したSonja 3.2のときと基本的に同じですが、改めて紹介します。

革新的なLattice™(ラティス)ハイブリッド・ツイーター

画像
Lattice™(ラティス)ハイブリッド・ツイーター
画像
ウェーブガイドも刷新されました

注目すべき技術の一つが、全く新しいLattice™ハイブリッド・ツイーターです 。特別に選定した航空宇宙グレードの合金から自社で削り出した斬新なエアフレームを搭載しています。
このエアフレームは、80gのビレット(塊)から加工を開始し、最終的には0.03g未満という驚異的な軽さを実現しつつ、0.001mm以下の高精度で仕上げられます 。その独特な格子状の形状は、数百万CPU時間に及ぶ計算最適化の結果であり、不要な振動を抑制し、インパルス応答を改善、周波数レンジを拡大し、歪みを低減すると同時に、広い指向性を実現して広大なスイートスポットを提供します 。

指向性の拡大によりセッティングの幅が広がりました。解像度を担保しつつも、以前よりも厳しい表現が穏やかになったと感じます。

第3世代Ultracoherent™(ウルトラコヒーレント)クロスオーバー

画期的な第3世代Ultracoherent™クロスオーバーは、シミュレーションから得られた深い知見を応用しています 。YGカスタムメイドの金属箔コンデンサーや高性能抵抗器を採用し 、部品間の相互作用を最小限に抑えるために計算論的に最適化されたレイアウトが施されています 。  

その結果、ドライバー間の位相整合は極めて高いレベル(主要帯域で±5°の相対位相)で達成され、インパルス応答とトランジェント特性が最適化され、「かつてない性能」が実現されたと謳われています 。

Hailey 2.2に採用されていたDualCoherent™(デュアルコヒーレント)クロスオーバーも、周波数特性と位相特性を同時に最適化する自社開発ソフトウェアで設計され、競合に対する優位性とされていました 。

第3世代Ultracoherent™は、スピーカー単体だけでなく、アンプやリスニング空間まで含めたオーディオシステム全体を対象とした、より高度なマルチドメイン・シミュレーションを活用しています。特定のスイートスポットだけでなく、広いリスニングエリア全体で、この恩恵が出るように設計されています。

BilletCore™(ビレットコア)ドライバーとキャビネット技術

キャビネット構造も、引き続き自社加工の航空宇宙グレードアルミニウムが用いられています 。Hailey 3.2では、キャビネットの主要箇所にコンストレインド・レイヤー・ダンピング(拘束層制振)が施されています 。アルミニウムのシート間にダンピング材を圧着することでリンギングを抑制し、「剛性は高いがデッドに聴こえない」キャビネットを実現します。

ドライバーの幅を超えないように設計されたモジュラー構造は回折現象への対策であり 、密閉型エンクロージャーはポート設計に起因する歪みを排除します 。  

仕様比較

スクロールできます
仕様Hailey 3.2Hailey 2.2
ツイーターLattice™BilletDome™/ForgeCore™
クロスオーバー周波数90 Hz, 1.75 kHz 60 Hz, 1.75 kHz
クロスオーバー技術第3世代 Ultracoherent™DualCoherent™ (ToroAir™, ViseCoil™)
感度87 dB / 2.83V / 1m 87 dB / 2.83V / 1m
インピーダンス
(平均 / 最小)
4 Ω / 2.8 Ω 4 Ω / 3 Ω
寸法 (高さ×幅×奥行)120 × 33 × 54 cm122 × 33 × 54 cm
重量/本91kg77kg
新旧 Haileyの主な違い

ウーファーとミッドレンジ間のクロスオーバー周波数は、Hailey 3.2では90Hzと、Hailey 2.2の65Hzよりも高くなっています 。

YG Acousticsのモデリングによれば、この設計は「可聴帯域の重要な部分における位相特性を改善することを目的としているそうです。別の恩恵として、ミッドドライバーが受け持つ帯域が多くなることによって、音楽の重要な部分である、楽器やボーカルのボディ感の厚みが増し、温かみのある表現につながったと感じます。

反面、YG Acousticsがもっとも得意とする最低域の音階表現は、従来のクロスオーバー65Hzのほうが有利な面もありそうです。

これは音楽のいちばん大切な部分はどこか?という考え方の違いで評価が分かれるところです。

重量はHailey 2.2と比較して大幅に重く(91kg)なっています 。
寸法がほぼ同じであるにもかかわらず、1本あたり約14-15kgの重量増は、内部構造の大幅な変更によるものです。
より広範なキャビネット補強、より重厚なクロスオーバー部品(例えば、第3世代Ultracoherent設計のための大型インダクターや多数のコンデンサー)、あるいはドライバーのモーター構造の変更によるものと考えられ、これら全てが共振の低減と機械的安定性の向上に寄与しているはずです。

YGの伝統的な強みであるキャビネット振動と歪みのさらなる低減の追求 が、より多くの内部補強や、より進化したダンピング材の適用につながったのかもしれません。
これらの内部強化は、スピーカーが「ひずみを排除し、より高い明瞭度を達成することに貢献しています。  

前モデルと比べて中域の厚みや温かみがあり、セッティングにも寛容で鳴らしやすいスピーカーだと思います。他メーカーと比べた際に、特出した基本性能の高さはYGのそれですが、神経質な感じがなく、音源の対応幅も広いと感じます。

前シリーズまでの攻めた音が好きな方も多くいらっしゃると思いますが、従来のYGが好きな方、そうでなかった方にも改めて聴いて欲しい製品です。

ご興味を持たれた方は、是非当店にお問い合わせください。