U-BOYです。
ポルトガルのミュージックサーバー、ストリーマー専業ブランド Innuos(イニュオス) の取扱を、このたび弊社でも開始しました。
欧米のハイエンド市場ではすでに確立された評価を得ているブランドですが、日本でもこれから本格展開が開始されます。
今回、ブランドの新フラッグシップである Nazare(ナザレ) の試聴機をお借りすることができましたので、ご紹介します。

Innuosのラインナップ
現行のInnuosは、以下の3シリーズで構成されています。
- STREAMシリーズ(STREAM 1 / STREAM 3)— エントリー
- ZEN Next-Genシリーズ(ZEN / ZENith)— モジュラー設計のミドル~ハイクラス
- NAZARE — 新フラッグシップ
上位モデルほど筐体、電源、内部PCとしての処理能力が強化され、音数と空間情報が素直に増えていく構成です。ラインナップ全体で音の方向性は一貫しており、どのモデルにもInnuosらしさがきちんと通っています。
Nazareについて
ポルトガル沖の有名な大波ポイント「ナザレ」から名付けられた、Innuosの新たな頂点です。ミュージックサーバー一台としてはかなり異例の構成で、設計は以下のような内容になっています。
筐体と防振

非対称ファシアで定在波を拡散し、TONEOとの協業による「SmartStack」防振技術を要所に投入。フットには IsoAcoustics 製のシステム・チューンド・フットを採用しています。
電源
高精度マルチフィラ・トロイダルトランス、Lundahl製カスタムインダクタ、GaNベースの能動整流。コンデンサ・バンクは総容量 752,000μF にも及びます。サーバー機器の電源部としては、突き抜けた物量です。
PCとしての性能
なお、Innuos本国では通常、PCとしてのスペックを大きく謳うスタンスは取っていません。音質は総合的な設計で決まり、スペックではなく音を聴いて評価してほしいという姿勢です。
その上で参考までに触れると、Nazareの処理部は以下のような構成になっています。
- 20コア構成のプロセッサ 物理コア10個と仮想コア10個、合計20コアを搭載。ミュージックサーバーとしては余裕のある処理リソースを確保しています。
- AudioCore技術によるタスクの完全分業 汎用PCのように複数処理を混在させるのではなく、オーディオ処理タスクを個別の専用コアに割り当てて実行します。
- リアルタイムカーネル動作の独自OS「Sense」との連携 上記の分業をOSレベルで支え、処理の遅延とノイズを極限まで抑え込む設計です。
さらに、専用設計の PreciseUSB、PreciseNETボード をCPU直結で搭載。メインボード由来のノイズ干渉経路を物理的に断ち切る、という思想が見て取れる構成です。
別筐体ユニット
ネットワーク信号専用のスイッチ NazareNET、出力側のリクロック・ユニット NazareFLOW が別筐体で用意されています。
NazareFLOWは、USBやI2S(HDMI経由)といった汎用出力に加え、CH Precision専用の CH Link、MSB専用の Pro ISL といった、DAC側メーカー独自の専用ケーブル接続を選択できる仕様となっているそうです。
ネットワーク、処理、出力の各段を独立した筐体に分けていくという、CHの10シリーズやdCSのAPEX系と近い思想をミュージックサーバー側で実装した構成と言えるかもしれません。
試聴
今回は、NazareをRoon Serverとして使用し、dCSのBartok APEX DAC、Mola MolaのTambaqui DACを使用しました。試聴期間は短かったのですが、実際に店頭で鳴らしながら気付いた点を中心にご紹介します。
全体のサウンド傾向
まず感じるのは、音の静けさです。
音と音の間の暗さが深く、そこから音像が浮かび上がる感覚があります。
ノイズフロアが下がったというより、音楽を構成する情報の密度が上がって、相対的に余白がはっきり見えてくるようです。
Nazareの音は、アナログ的な温度感で聴かせるタイプではありません。
ファイル再生らしくない音、というような意外性で勝負する方向でもなく、一般的に良質とされるデジタルファイル再生の音、「クリアで、空間が広く、見通しのよい音」をそのまま一段磨き上げた、そういう性格の音です。
透明感、空間の広さ、音の輪郭のきれいさ。
デジタルの理想形をさらに精度高くやると、こういう音になるのか、と素直に納得する鳴り方をします。
弱音の表情が豊かで、細かい音が埋もれずに立ち上がってきます。
大編成でもステージが潰れず、各楽器の位置関係がそのまま立体として見えるのは、処理能力と電源に徹底的に物量を投じた結果かと思います。
派手でわかりやすい音ではないので、静かな環境でじっくり聴いてほしいです。いわゆるデモ会場映えする派手な音ではありません。
シリーズ内でSTREAM、ZEN Next-Gen、Nazareと聴き比べると、音の方向性は共通していて、上位ほど素直に音数と空間情報が増えていきます。
Nazareはその延長線上の、現時点での到達点という位置づけです。
USB出力とイーサネット出力の比較

今回は Mola Mola Tambaqui をDACとして、NazareからのUSB出力と、イーサネット経由での入力(TambaquiのRoon Ready機能を使用)で音を比べました。
圧倒的な差というわけではありませんが、傾向ははっきりと出ます。
- USB出力:音のフォーカスがより立ち、像がシャープにまとまる方向
- イーサネット出力:少しゆったりと、広がりを感じさせる方向
オーディオ的な性能は、USBの方が若干上と感じましたが、DAC自体のUSBおよびイーサネットの設計、ネットワーク環境によっても評価は逆転する可能性があります。
クロックの安定と、最良の音が出るまで
3日間という短い試聴期間の中で明確だったのは、電源投入後にクロックが安定してくるまで、それなりに時間がかかるということ。Nazareの実力がもっともよく出たのは、結果として 最終日の3日目 でした。
デモや試聴で一度つないだだけでは、本来の姿の半分も聴けていない可能性があります。
腰を据えて鳴らし込んでこそ、真価が見えてくるタイプの機材だと感じました。
Roonサーバーとしてのデモ
今回は Roon Server としてのデモが中心で、Innuos独自OSの Sense は少ししか触れていません。
SenseはInnuosの音作りの核ともいえるソフトウェアですので、改めてじっくり確認する機会を設けたいと考えています。
当然、Senseを使う場合は、RAATは使えませんので、USB接続が前提です。
STREAM 3の展示予定について
弊社では価格と設置バランスを考慮し、エントリー上位の STREAM 3 を発注しました。STREAM 3については、入荷次第あらためてご紹介します。
Innuos、そしてNazareに興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

