
U-BOYです。

MAGICOの新Sシリーズから、最もコンパクトな3ウェイモデル「S2」をお借りすることができましたので、試聴レポートさせていただきます。
当店にはM2を常設展示しておりますので、同じ「◯2」というポジションで、ユニット構成もサイズ感も比較的近いS2がどう鳴るのか、興味深く聴かせていただきました。
S2のための新技術 ― 7インチ径ドライバーで初採用の第3世代シャーシ

S2を語る上で外せないのが、MAGICOが3年の歳月をかけて開発した「第3世代ドライバーシャーシ」を、7インチ径のウーファーに初めて適用したという点です。
この新シャーシは、強度配分の最適化、サスペンション設計の改良、動的なワイヤー張力を均等化するデュアル・ポスト構造などを盛り込み、機械的・音響的パラメーターの両方を飛躍的に向上させました。
S5の10インチ・ウーファーやS3の5インチ・ミッドレンジには採用されていない、「S2のために新規開発された7インチドライバー」がこのシャーシを纏っています。
コーン形状や材質だけでなく、シャーシ構造そのものから手を入れる。MAGICOらしい徹底ぶりです。
シングルピースのアルミ押し出し材によるエンクロージャー
S2の構造的な核は、一体成形のアルミニウム押し出し材によるエンクロージャーにあります。
一体成形と垂直ブレース
押し出し成形の段階で、内部に全高にわたるU字型の垂直ブレースが一体化されており、エンクロージャー全体が一つの構造体として振動を抑え込む設計です。
補強パーツを後付けする発想とは根本的に異なるアプローチで、剛性とダンピングの理想的な組み合わせを引き出しています。
同じSシリーズでも、S3はティアドロップ形状を4枚の押し出しパネルで構成しており、S2のシングルピース構造とは設計思想が異なります。
限られたサイズの中で剛性を稼ぐための、S2ならではの選択と言えるでしょう。
Polytecレーザー振動計による解析
開発段階では、パネル表面の微細な振動をPolytecレーザー振動計で可視化し、3Dモデリングと組み合わせて潜在的な共振モードを潰し込んでいます。
事後に吸音材で誤魔化すのではなく、設計の入口で「鳴かない箱」を作り上げるアプローチです。
Sシリーズ全体に流れる、剛性向上の系譜
個人的な印象になりますが、MAGICOのSシリーズはS3MK3、つまり第三世代になってから筐体の剛性が大幅に上がっており、音量を上げたときのひ弱さがなくなったように思います。
S2はサイズこそ小型ながら、その傾向をしっかり受け継いでおり、見た目からは想像しづらい60kgという重量がそのことを裏付けます。
以前のS1MK2と比べても、明らかに腰が据わった音です。
第8世代Nano-Tecと、ダイヤモンドコート・ベリリウム
ドライバー構成は3ウェイ4ユニット。それぞれにMAGICO最新の技術が投入されています。
28mmツイーター

フラッグシップM9をベースとした、ダイヤモンドコーティングを施したベリリウム振動板を採用。ネオジムベースのモーターシステムにより、50kHzまで伸びる広帯域と低歪みを両立しています。Sシリーズの中でも別格のパワーハンドリングです。
5インチ・ミッドレンジ
第8世代Nano-Tec(アルミハニカムコアをグラフェン強化カーボンファイバーでサンドイッチした構造)コーンを、第3世代ドライバーシャーシに搭載。
75mmという大口径ボイスコイルには純チタン製のボビンが採用されており、一般的に使われるグラスファイバー・テープによる固定を排しています。これにより不要なダンピングが生じず、鮮度の高い中域が引き出される設計です。
7インチ・ウーファー × 2

前述の第3世代シャーシを初採用した、S2のために新規開発されたユニット。
第8世代Nano-Tecコーンと3インチ・ボイスコイルを組み合わせ、1m地点で最大109dB(55Hz)という、コンパクトな筐体からは想像しがたい音圧能力を備えます。
密閉型らしく、滲みのない正確な低域再生です。
ESXOクロスオーバー
MAGICO独自の楕円対称クロスオーバー(ESXO)には、ドイツMundorf製のM-Resist Ultraフォイル抵抗器と新型の銅箔ペーパーコイルを採用。マイクロフォニック効果が抑えられ、ノイズフロアがぐっと下がっています。
落ち着いたトーンと、緻密なハイファイ表現
音を出して、まず印象に残るのは音色の落ち着きです。
軽やかに鳴らすタイプではなく、適度な厚みと重量感を伴うサウンド。明るく華やかな方向ではなく、しっとりと地に足のついたトーンで、長時間聴いていても気持ちのよい安定感があります。
このあたりは、剛性の上がったSシリーズの近年の傾向そのものでしょう。
空間表現については、ステレオイメージの精度がとても高く、演奏者の位置がとても把握しやすい。
左・中央・右といった大まかな配置ではなく、その間を埋める連続的なレイヤーとして、楽器の遠近が描き分けられます。
解像度の方向性で言えば、音の抜け感や宙に浮くような軽やかさはMシリーズには一歩譲ります。一方で、Aシリーズと比較すれば明らかに緻密で、ハイファイ傾向がぐっと強い。
この「Sシリーズらしい中間点」が、S2でも明確に表現されていると感じました。
ラインナップの中でのS2
当店ではM2を展示していますので、両者を比較する形でS2の立ち位置をお伝えします。
M2はカーボンモノコック筐体による独特の抜け感と空気感が魅力で、より凝縮されたフラッグシップの表現を聴かせます。
S2はそこまでの抜け感はないものの、Sシリーズらしい腰の据わった重量感と、第8世代Nano-Tecによる緻密な描写を、現実的なサイズ・価格で実現している点が見どころです。
Aシリーズと比べれば、解像度や緻密さでは明らかに一段上のクオリティ。
Mシリーズの空間の広さ、抜け感には及ばないものの、その分密度感のある濃い音を楽しむことができます。
公称インピーダンス4Ω、能率86.5dB。近年のスピーカーとしは、サイズから考えると標準的でしょうか。
良質なプリメインでも十分鳴りますが、アンプの駆動力はある程度必要なスピーカーだと感じました。真空管、トランジスタ、プリメイン、セパレートといろいろな組み合わせで鳴らしていますが、スピーカーのキャラクター自体は安定しているものの、空間の広がり、抜け感はアンプにも依存する用に感じました。
まとめ
スピーカーのサイズが、必ずしも音楽のスケールを規定するわけではない。MAGICO S2は、そのことを改めて教えてくれる一台です。
剛性の高いアルミ・エンクロージャー、7インチ径で初採用となった第3世代シャーシ、第8世代のナノテクノロジー振動板。これらが60kgのコンパクトな筐体に凝縮されながらも、音は決して大袈裟にならず、落ち着いたトーンで緻密に描き出されます。
Sシリーズの中堅機として、現代の住空間に現実的に収まるサイズで、ハイファイの本質を体験させてくれる完成度の高いモデルです。
ご興味のある方はお気軽にご相談ください。

