オーディオ用ルーター、Top Wing – DATA ISO BOX 常設しました

Top Wingよりオーディオ用ルーターとアクセスポイントが販売されました。
店頭で常設を開始しましたので、使用感などをレポートします。

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左:DATA ISO BOX、右:OPT AP
CDジャケットと比べてみました

オーディオ用ルーターは日本でも数ブランド展開されていますが、スイッチと違い、作る側も使う側もハードルが少し高いかもしれません。

以前に紹介したTaiko AudioのExtreme Routerは、さすがのクオリティーでしたが、金額も頭2つくらい抜き出ていましたので、全員にすすめられるものではありませんでした。

今回、Top Wingからオーディオ用ルーターとアクセスポイントのセットで77,000円(税込)という素晴らしい製品がリリースされましたので、紹介します。

以前のTaiko Audioの記事はこちら

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TAIKO AUDIO – Extreme Router 試聴レポート オーディオ用ルーターの頂点、TAIKO AUDIOのExtreme Router 試聴レポート です。同社のスイッチ、追加電源も含めてレビューします。
目次

Top Wing – DATA ISO BOXおよびOPT APについて

オーディオ用ルーター DATA ISO BOX

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一般的なネットワーク環境

DATA ISO BOXの最も重要な機能は、オーディオ専用のLANセグメントを構築し、一般的な家庭内ネットワークからオーディオシステムを隔離することです。

家庭内ネットワークでは、DHCP(IPアドレス自動割り当て)やARP(アドレス解決プロトコル)といったブロードキャスト通信、UPnP/SSDP(IoT家電の探索や通知など)に代表されるマルチキャスト通信、そして個々のデバイス間で発生する無数のユニキャスト通信が常時飛び交っています。

オーディオ機器もこれらの通信を受信すると、自身宛のものか否かを判断する処理が発生します。この「判断処理」の頻度が高いほどオーディオ機器のCPU負荷は増大し、それが電源の微細な変動や内部的なデジタルノイズを引き起こす要因となり得ます。

DATA ISO BOXは、これらのオーディオ再生に不要な通信パケットがオーディオ専用ネットワークに侵入するのを防ぎ、オーディオ機器が音楽信号の処理に専念できる「静かな」環境を提供します。

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ダブルNATの状態となり、家庭用のネットワークオとーディオ用ネットワークを分離

もう一つルーターを用意し、ダブルNATの環境を構築すること自体は一般のルーターでも可能ですが、オーディオ用ルーターと呼ぶだけのこだわりがあります。

堅牢なハードウェア設計

オーディオ専用ネットワークの安定性と信頼性を確保するため、DATA ISO BOXのハードウェアは堅牢な設計です。心臓部となるCPUには、業務用ルーターなどでも採用実績のある信頼性の高いものが選定されています。また、メモリには高品質で知られるSK Hynix製のDRAMを採用し、ネットワークの効率的な分離処理や多数の同時接続時における安定動作を支える強固な物理的基盤を構築しています。 

ネットワーク分離に最適化されたソフトウェア構成

ハードウェアの堅牢性に加え、DATA ISO BOXのソフトウェアもオーディオ専用ルーターとしての役割を果たすために徹底的に最適化されています。「何も足さない、何も引かない」という設計思想のもと、オーディオ再生に不要な機能やプロセスを極力排除し、ソフトウェア自体が新たなノイズ源となったり、システムの動作を不安定にしたりすることを防いでいます 。これにより、長時間の連続再生や複数のオーディオ機器を接続した場合でも、安定したパフォーマンスを維持し、オーディオ品質を損なうことのないよう配慮されています 。  

通常、筐体や電源を強化してオーディオ用と謳うことはできても、ソフトウェアから取り組めるメーカーは貴重です。

なお、ルーターにはアクセスポイント(Wi-Fiを飛ばす機能)は搭載していません。
これにより小型化を実現し、金属筐体を採用しています。

オーディオ用アクセスポイント OPT AP

先に紹介したルーターにはアクセスポイント(Wi-Fiを飛ばす機能)は非搭載です。
そのため、別途アクセスポイントが必要ですが、なんとアクセスポイントもオーディオ用として設計しています。

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オーディオ用ネットワークに別途アクセスポイントを追加
これによりタブレッドで音楽再生が可能です

オーディオ用途に特化したシンプルなソフトウェア構成

OPT APの最大の特徴は、オーディオ再生に不要な機能を徹底的に排除したシンプルなソフトウェア構成です。一般的な業務用アクセスポイントには、複数台のアクセスポイント間をシームレスに接続移行するローミング機能、多数のデバイスを統合管理する複雑な集中管理システム、LANケーブル経由で電力を供給するPoE (Power over Ethernet) 給電機能などが搭載されていますが、OPT APはこれらの機能を意図的に搭載していません。

これらの高度な機能は内部処理を複雑化させ、ソフトウェアの動作安定性に影響を与えたり、高周波ノイズの発生源になったりする可能性があるためです。

オーディオ用途に特化し機能を絞り込むことで、OPT APは動作の安定性を高め、潜在的なノイズ源を設計段階から排除し、無線区間においても信号の純度を保つことを目指しています。

Wi-Fi 6対応による高速かつ安定した無線通信

シンプルさを追求しつつも、無線通信の基本性能に妥協はありません。OPT APは最新の無線LAN規格 Wi-Fi 6 (IEEE 802.11ax) に準拠し、5GHz帯で最大2402 Mbps、2.4GHz帯で最大574 Mbpsという理論上の最大通信速度を実現します。さらに、最大160 MHzのチャンネル幅や、複数のデバイスと同時に効率的な通信を行う2×2 MU-MIMO (Multi-User, Multiple Input, Multiple Output) にも対応。これにより、ハイレゾリューションオーディオのストリーミング再生や大容量の音楽ファイルの転送、カバーアートなどリッチコンテンツを含むライブラリの表示といった帯域幅を要求する操作も、スムーズかつ安定して行えます。

SFP光ポート搭載による将来的な拡張性(DDM対応)

OPT APは、一般的な有線LAN接続用のRJ45ポートに加え、将来的なネットワークの光化に対応するSFP (Small Form-factor Pluggable) ポートを一基搭載しています。

SFPポートの是非はいろいろな意見があると思いますが、SFPを搭載したアクセスポイントは前例がありません。
セットで販売されているルーターにはSFPポートはありません。将来的に発売予定のメディアコンバーターを使い、RJ45ケーブルをSFPに変換して接続することを想定しています。

既にダブルNATでオーディオ用ネットワークを組んでいる方はもちろん、通常のホームネットワークのルーターのWi-Fi機能を使わず、オーディオ用アクセスポイントで運用するだけでも通信の安定化、音質の向上が期待できます。

DATA ISO BOXとの連携を前提とした簡単なセットアップ

OPT APは、オーディオ専用ルーター「DATA ISO BOX」との連携を強く意識して設計されています。基本的には出荷時にオーディオ用途へ最適化された設定が施されているため、ユーザーはDATA ISO BOXの専用APポート(無線AP用ポート)にOPT APをLANケーブルで接続するだけで、複雑なネットワーク設定をせず即座に使用を開始できます。

出荷時は、
ルーターのIPアドレスが192.168.104.1
アクセスポイントのIPアドレスが192.168.104.10
です。
ルーター側のDHCP振り分けはアクセスポイントと競合しないよう192.168.104.128からスタートする設定で、細かい部分にも配慮が感じられます。

なお、アクセスポイント単体で購入する場合、ご自身のネットワーク環境に応じてセグメントを変更する必要があります。詳しくはお問い合わせください。

音質の傾向について

ホームルーターから接続しているオーディオ用スイッチ EdiscreationのSilent Switch OCXO2 & Fiber Box 3の上流に設置し、Top Wingのルーターあり・なしで比較しました。

使用した機器

  • Roon Server: Ediscreation – BACH JP MODEL
  • DAC: Mola Mola – Tambaqui DAC(イーサネット接続)

ルーターを導入すると、一つひとつの音に力が宿るというか、生き生きとした印象に変化します。ネガティブな要素は感じられません。
Taiko Routerのような凄みを感じるほどの違いではありませんが、明らかに好ましい方向へ変化します。

Taiko Routerはバッファロー製の簡易アクセスポイントを使用していましたので、同じ環境でOPT APを使用すればさらに良くなるのではないか、とも考えました。

Top Wingのルーターおよびアクセスポイントは付属の12V 1.5Aアダプターを使用しています。
これをGAN電源やリニア電源に変更することで、さらなる音質向上の可能性もありそうです。

追記

オーディオ用スイッチを使わない場合は?

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製品にはオーディオ機器と接続するためのポートが三つ用意されています。
例えばRoon Server、NAS、ネットワークプレーヤーの三台であれば、スイッチを使わずに接続を完結できます。

通常はEdiscreationのSilent Switch OCXO2 & Fiber Box 3から各ネットワーク機器へ接続していますが、どのくらい違うか確認してみました。

これは単一ネットワーク再生の時と同様、スイッチの有無による差ははっきりと現れます。
ただ、DATA ISO BOXから直接接続しても、十分に高いレベルで楽しめるでしょう。

「スイッチとルーター、どちらから手を加えるべきか」
という質問をよく受けますが、順番としては、従来通りオーディオ用スイッチを導入し、さらなる改善策としてルーターを加えるのが良いと考えます。

ちょっとしたゲーミングルーターより安価でありながら、オーディオに特化したルーターを発売してくれたメーカーの心意気は称賛に値します。

バンドルセットは1万円お得です。
環境的にダブルNATが難しいものの既存ルーターにアクセスポイントを加えたい方や、既にダブルNAT環境を構築済みの方には、OPT AP単体という選択肢もあります。

DATA ISO BOX+OPT APバンドルセット 77,000円(税込)
DATA ISO BOX単体 55,000円(税込)
OPT AP単体 33,000円(税込)

今後も尖った製品を期待しています。

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https://www.u-audio.com/shopdetail/000000009041/
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