U-BOYです。
このたび弊社でも Innuos(イニュオス)の取扱を開始し、STREAM3を常設しました。フラッグシップの Nazare は別記事で触れていますので、今回はSTREAM3に焦点をあてて紹介します。


Innuosについて
ポルトガルの、ミュージックサーバー、ストリーマー専業ブランドです。「オーディオ再生のために、コンピューターをゼロから作り直す」という思想で開発を続けてきました。欧米のハイエンド市場では、すでに評価の固まったブランドです。
STREAM3を選んだ理由
導入にあたり、上位機から一式聴かせてもらいました。Innuosは上位になるほど、電源や筐体、処理能力に投じる物量が増えます。残念ながら音質も価格順と言わざるを得ません。
現状、他社のRoon Serverを見渡したときに、Roon Nucleus からステップアップするちょうどよい製品がないと考えていたこと、価格と性能のバランスをみたときにコストパフォーマンスが一番高いと考えて本モデルを常設することにしました。
中身は「特別なPC」ではない
Innuosの製品は具体的なPCスペックを公式には公表していません。「スペック=音質」と受け取ってほしくない、というメーカーの姿勢によるものです。
参考までに海外レビューを見ると、STREAM3は第13世代Intelのクアッドコアに8GB DDR5メモリ、といった構成のようです。PC自体は高性能ではありません。さらに発熱やノイズを抑えるため、CPUの動作周波数を落として使っています。実際、ファンレスでCPUの内部に大きなヒートシンクも見当たりません。発熱を抑えた設計であることは明らかです。
Innuosの本領はPCのスペックよりも、電源や筐体、振動対策といったハードウェア、そして自社OSによるソフトの作り込みにあります。
専用OSと、AudioCore

SenseはLinuxをベースにしたオーディオ専用OSです。もともと音楽再生に特化しているため、音声に関係ない処理はそもそも多くありません。ここにリアルタイム(RT)カーネルを組み合わせ、処理の遅延とばらつきを抑えています。
デジタル再生では、出口(DAC)に近いところのジッターをいかに減らすかが音質に大きく影響します。
この考えを一歩進めたのが、上位機のAudioCoreです。
音声処理を専用の物理CPUコアに割り当て、他の処理から隔離します。特定のタスクを独立したコアで扱うことは特別珍しい技術ではありません。RTカーネルと合わせてどこまで最適化しているかはブラックボックスです。
AudioCoreはコア数に余裕のあるZEN Next-Gen以上の機能で、クアッドコアのSTREAM3には非搭載です。
むしろ感心するのは、SenseとRoonという性格の違う2つの再生系を、1台で両立させている点です。専用の再生アプリを作り込む事自体は、オーディオ専用のOSを作り込むよりもはるかに難易度は高いです。AudioCoreという技術よりも、OS・電源・クロックまで一貫して、ハードウェアとソフトウェアを作り込めるのが、Innuosの強みといえます。
この「出口からノイズを遠ざける」発想を突き詰めたのが、Innuosを2台使う構成です。1台をサーバー、もう1台をブリッジ(出口)に分け、出力側の演算負荷とノイズを排除します。隔離の考えを、CPUの隔離であるAudioCoreから、ハードウェアへ発展させた形です。
この2台使いは、Roonでいえば Roon Bridge にあたる手法で、Roon利用時は他社製品との組み合わせも可能です。そして専用アプリのSenseでも、同様に2台構成ができます。
操作性 ― アプリとブラウザ
操作は専用アプリ「Innuos Sense」で行います。再生に加え、ファームウェアの更新や、SenseとRoonの切り替えもアプリから可能です。
アプリを入れなくても、Webブラウザに機器のIPアドレスを入力すれば、同じ画面を呼び出せます。実際に触れると、動作の軽快さと画面の作りに、ソフトウェアとしての完成度がうかがえます。

LANとUSB出力について

Roonをお使いの場合、USB接続とLANはどちらが音が良いか?という質問をよく受けます。
これは、ネットワーク環境とDAC側のUSB/LANの作り込みにもよりますので、環境次第としか言えませんが、傾向としては、LAN(RAAT)の方が広がりが出て、USBの方がフォーカス感が出ることが多いです。
オーディオサーバー側は、外的要因(この場合でいうとネットワーク環境)に左右されたくないという思想もあると思いますが、USBに力を入れているメーカーが多いと感じます。
Innuosの場合でも、専用OSのSenseは、RAATではないので、USB(または出力ボード)で音を出す設計です。RTカーネルの恩恵を受けるのは、LANよりもUSB出力ですし、自社アプリはUSB出力を前提にしていることも踏まえて、当社の展示機はオプションのPhoenixUSB Boardを追加しております。
少し変わった選択肢として、「ROON WITH INNUOS PLAYER(Experimental)」という実験モードもあります。Roonをフロントエンドに使いつつ、出力をRAATからSqueezelite(Roonのスクイーズボックス連携)へ差し替えるモードです。

有効なのは本体直結のUSB出力やDACボードのときだけで、LAN経由のRoon Readyエンドポイントは対象外で、RAATで出力されます。上限がPCM 24bit/192kHz・DSD64に制限される点は踏まえておく必要がありますが、RAAT以外の経路で音を比べることができます。
内蔵ストレージとリッピング
本体にはM.2 NVMe SSDを増設でき、ネットワークストリーマーからミュージックサーバーへ性格が変わります。市販品も使えますが、展示機には純正のpSLCタイプを載せています。
ストレージを入れると、市販のUSB接続CDドライブをつないでCDのリッピングが可能です。PCを介さず、本体だけで取り込めます。
手持ちの音源を内蔵ストレージへ移すのも簡単です。
STREAM3はネットワーク上に、NASのような共有フォルダ(Auto-Import / Music / Unsorted)を公開します。パソコンからこの共有にアクセスし、音源フォルダをMusicに置けば、そのままSenseのライブラリに反映されます。
共有へのログインは、
ユーザー名:guest
パスワード:innuos
です。
音質傾向
基本の方向性は、透明度の高さです。
スッキリとした洗練された方向で、ノイズレベルがとても低い静かな音です。
また、ノイズ感がないことにもつながりますが、うるさくならず、強調感がありません。
上位モデルほど、静けさの中に漆黒を感じるような背景の描写、音の厚み、エネルギーの違いは出てきますが、落ち着いて静かであるというのは、メーカー共通のサウンドだと感じます。
SenseとRoonの音の違い
同じSTREAM3でも、Sense(USB出力)とRoon(RAAT/LAN)では傾向が変わります。
まず、Roonで、LANとUSB出力を比較すると、解像度は若干USBの方が有利な傾向があると思います。LANの方が少し甘くなるように感じますが、その分音場は広いです。
SenseはRoonのUSBと比べても、よりキリッとした傾向で、細部の描写はRoonよりも有利に感じます。UI的には、Roonと比べるとまだ改善の余地はあると思いますが、いろいろな再生アプリを触っている中では、及第点は与えられるレベルでしょうか。
常設展示しています
STREAM3は店頭に常設展示しています。Innuosにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

