MAGICO M9試聴レポート

エレクトリさんのご厚意により、販売店としては日本で一番最初にMAGICO M9を聴かせて頂きました。

ラウンジスペース
写真左側は素晴らしい眺望で、広々とした空間のエレクトリさんのラウンジ・スペース
外の景色
ただこの日はあいにくの霙と雪混じりでした。

当店スタッフ一同でエレクトリさんに赴き、試聴室に入るやいなやM9を目のあたりにした当店スタッフ全員が発した一言目は、「デカイ」、という言葉でした。

M9全景
高さ203cm、横幅最大51cm、奥行き102cm 重量454kgは流石に巨大ですが、エレクトリS氏の解説を聞くにつれ、
技術的理由と意味がある統一感あるデザインと感じました。

しかしエレクトリS氏、K氏、T氏からM9の技術的な解説を聞きながら細部ディティールをよく見ていくと音響的にとても考慮されていることがわかり、それが機能美的に洗練されたデザインとして反映されている感じで、これまでのウルトラハイエンドスピーカーの中でも非常に理にかなったまとまったデザインという印象に変わりました。

引き続きS氏からM9ならではのアクティブネットワーク技術ほか詳細な説明をして頂いている間、かなり静かめの抑えた音量でBGMが流れていたのですが、その程度の音量でも時折かなりエグい超低域がしっかり聴こえており、これが実際のリスニングボリュームになったらどうなるのだろう、という恐怖と期待が錯綜しました。

M9 ウーファー部
静かめのBGM音量でも地を這うような低音を再生していた15inch(38cm)ユニット・タンデム部分。本体が大きいため38cmに感じません。

試聴は定番的な試聴ディスクを持ち寄ったほか、エレクトリさん試聴室に各評論家先生方が実際試聴時によく使われている試聴音源データが豊富にありましたので、それらを用いて行いました。

試聴開始直後に戸惑ったのは、この演奏にこんな音入っていたかな?と感じ、「これはきっと聞き慣れた音源の別な演奏家のバージョンか、別のテイクをS氏がかけてくれてるのだな。」と思い再生トラックを確認するのですが、それはたしかにいつもの音源であったり、「なにか部屋のどこかで別の音がしている。」と感じ思わず周囲を確認してみますが、目の前のM9からしか音が鳴っていないことでした。

そして曲が進むにつれ徐々に当スタッフ一同がまず思い知ることとなったのは、試聴した音源すべてが、これまで聴いたことがない音で再生されているだけでなく、音源にまだ聴けていない音がこれほどあったのかという驚きと、いったい今まで聴いていた音はなんだったのかという度し難い現実と正対することでした。

剰え初めて聴こえてくる音の多さにやられてしまっているうえに、楽曲によっては「何度も聴いてきたはずの曲もじつは聴いたつもりになっていただけで、もしかしすると今までは本来録音されている8割程度の部分しか聴いてこなかったのかもしれない。」と気づきはじめ、愕然とさせれらる瞬間が何度もありました。

M9
今まで聴いていた音とは・・・

闇の奥から地響きが聴こえてくるような恐怖感を伴う低音であるにも関わらず低域の階調がハッキリわかりますが、よく言われるように最低域付近の音階の動きが分かるほど正確な低域再生能力、といったレベルは優に超え、「超低域まで楽曲として一体となって奏でられている。」というほうが相応しい感じです。

それでいて全帯域に渡ってスピードが早く、位相も整っているせいか、まるで巨大氷山が眼前に迫ってくるような強烈な迫力で、耳で聴くというよりひと塊の分厚い濃密な音を全身で受け止めているような感覚にも陥ります。

M9 上部
11inchのミッド部もタンデムでかなり高いポジションにありますが、リスニングポイントでは一つにまとまった音像で届きます。

不思議なのは、これほど鬼気迫る巨大なひと塊のエネルギー感であるのに弦楽器や管楽器のソロパート、ボーカルなどは、演奏している姿や歌う表情が目に浮かぶほど極めて情緒的で、色気や艶やかさといった表現もこなし、録音スタジオの空気感やステージの立ち位置、また演奏弾き初めの1音が出る直前の緊張感、マイクの前に立ち歌い出す直前の息遣いや気配といった要素までが異様なほどリアルに伝わってくることです。

M9 全景2
ユニット配列の視覚的イメージから想像される音とは、まるで異なるシームレスで自然な音のつながり。

またオーケーストラものや、ライブ音源、ワンポイント収録音源などでは、これだけ莫大なエネルギーを伴う音にも関わらず音場は広大で見通しがよく、奥行き方向、上下縦方向、左右横方向、後方向にも立体的に展開するのに音像が肥大することもなく、まさにその演奏の場に居合わせ聴いているような臨場感を伴い、まるでVRセット無しでメタバース感を2chのスピーカー再生で遣り退けてしまうような表現力は驚異的です。

この驚異的な3次元空間の広がりをみせる再生音は、マジコならではの強靭な筐体設計テクノロジーはもちろん、メインスピーカー2本に別筐体でサブウーハーを追加して最低域を補う方式ではなく、あくまでコンベンショナルにスピーカー筐体は2本にし、パッシブネットワークではどうしても大きくロスしてしまう領域の問題を、作り込まれたアクティブネットワークでクリアしたことの恩恵が大きいのかもしれません。

アクティブネットワークボックス
15inchバス、11inchミッドバスを管理するアクティブネットワーク

この秀逸なアクティブネットワークのおかげか録音のミキシング意図が分かるような解像力も備えており、位相も違和感がなく、それぞれの楽器の音色や声の質感が実に生々しく、なおかつごく自然で真率に聴こえます。

こうした再現性の高さに加え、先述しましたようにただ解析的という表現に留まらない”奏でられた最低領域”とがシームレスに織り合わされることで、これだけエネルギッシュでパワフルであるにも関わらず、凄い再生能力という表現でただ終始することなく、あくまで音楽として端正にまとめ上げられているのかもしれません。

M9 ツゥイーター
各ユニットのつながりは極めてシームレスにつながり、これだけの巨大サイズにも関わらず音像はコンパクトです。

何度も聴きなれたはずの古い楽曲でも、こんなに緻密でしかもダイナミックスをつけた演奏をしていたのかという発見や、2ch再生でも実はこんなに立体的で実験的かつ有機的にミックスをされていたのかと、演奏家やアーティスト、録音エンジニアの思いや表現に初めて気づくような体験も多く、少々おこがましいですがMAGICO M9によってまだまだ再生しきれていなかった作品の深潭を俯仰するような感覚がありました。

このようにこれまでにない新たな音の出会い、そしてどの音源も楽しくより深く聴ける体験の連続でしたが、試聴後エレクトリの方々と当店スタッフらで交わした会話で一致したのは、「さんざん聴き馴みのある曲でも再度じっくり聴いてみたくなる衝動に強くかられる。」ということでした。

M9

当店は日本で唯一M6、M2両機種を常時展示しているMAGICO特約店です。Mシリーズ以外のモデルも常設展示機種がございます。他のMAGICOモデルについての試聴についてご用意できるものもありますので、ご興味がありましたらお気軽にご相談下さい。

なおM9につきましては設置や搬入に関わる必要な諸条件の確認のみならず、鳴らすアンプ特性など専門性を伴うご説明を含めて特別なご案内が必須となりますので、ご検討されてる方は別途ご相談下さい。

https://www.u-audio.com/shopdetail/000000007673/

ー オマケ ー
試聴の際エレクトリさんから飲み物を頂いたのですが、試聴ポイント約2~3mくらいの距離で、爆音でもない音量ボリュームであったにも関わらず、テーブルに置かれた飲み物の水面が振動してしまうほど恐ろしく地を這う低音とエネルギー感でした。

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