VERTERE – RG-1 PKG レビュー|アナログ再生の新しいステージ

U-BOYです。

VERTERE(ヴァルテレ)のフラッグシップ・アナログプレーヤー、RG-1 PKGをお借りしましたので、レビューします。

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 CL(クリア仕上げ)

当店では、ひとつ下のモデルであるSG-1 PKGをリファレンスとして常設しております。導入以来、日々さまざまなカートリッジ、フォノイコライザーを通してじっくり付き合ってきました。

SG-1自体、これまでのアナログ再生の常識を覆すほどの完成度を持ったプレーヤーであり、心底惚れ込んで使ってきました。上位モデルフラッグシップのRG-1がどんな世界を聴かせてくれるのか。大変楽しみにしていました。

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今回は、ふだんSG-1を設置している場所にRG-1をセッティングしています。
フォノイコライザーは、同社のCALONを使用。カートリッジは、当店のリファレンスであるLyra Atlas λに加えて、VERTEREの新製品RUBY ONEも使用しました。RUBY ONEについては、別記事であらためてご紹介します。

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MG-1からSG-1への進化を上回る、SG-1からRG-1への跳躍

最初にお伝えしたいのは、これまで体験してきたVERTEREのモデル間の差以上に、SG-1からRG-1への変化が大きかった、ということです。

MG-1 PKGからSG-1 PKGへのステップアップも、明確な差を聴かせてくれます。アクリル筐体の多層化、トーンアームのグレードアップ、軸受やモーターの上位仕様化。それぞれが積み重なって、音の余裕や繊細さ表現力に明確な違いがございます。それでも音の方向性は、同じ延長線上にあるという印象でした。

RG-1も、もちろんVERTEREの音の延長線上にあります。

しかし、聴こえてくる音楽の情報量、立ち上がりの鋭さ、空間の見通し、そして何より音楽の佇まい。これらが、明らかに別次元のものとして耳に届いてきます。

オーディオの世界では、価格が倍になったからといって、性能や満足度が同じだけ伸びるとは限りません。むしろハイエンド領域に入るほど、対価に対する見返りは小さくなっていく、というのが一般的な感覚かもしれません。

それを踏まえてもなお、この価格差に対して納得せざるを得ないだけのパフォーマンス差が、RG-1には確かに存在します。SG-1を日常的に聴いている私の正直な感想です。

「可動部が互いに干渉しない」という思想の徹底

ここからは技術的な側面です。
VERTEREの音を聴き、構造をじっくり眺めていると、私自身は次のような理解に至りました。

アナログ再生という行為には、避けて通れない不完全さが2つあると思います。

ひとつは、レコード盤そのものが完璧ではないということ。盤には反りがあり、偏心があり、盤厚や素材にも個体差があります。製造工程上、ゼロにすることのできない宿命です。

もうひとつは、プレーヤー側の駆動部分は、動いている以上、必ず振動が発生するということ。プラッターは回転し、モーターはトルクを生み、トーンアームは溝をトレースします。動いている部品には、大小の差はあれ振動がつきまといます。

この2つの不完全さは、根本的になくすことができません。

多くのハイエンドプレーヤーは、これらに対して物量で振動をねじ伏せるというアプローチを採ってきました。重い筐体、重いプラッター、強固な土台で、振動そのものを抑え込んでしまおうという発想です。

VERTEREのアプローチは、ここが違うように私には感じられます。

振動が発生することを前提としたうえで、プラッター、モーター、トーンアームといった各可動部が、互いに悪影響を及ぼし合わないように構造的に最適化する。振動を消そうとするのではなく、振動が伝わるべきでない経路を断ち、必要な部分だけが純粋に仕事をできるよう交通整理をしている。そんな印象です。

あくまで私の解釈ではありますが、MG-1、SG-1、そしてRG-1の三機種を聴き比べていくと、この方向性が次第にはっきりと見えてきます。

三者とも、根っこにある考え方は同じです。違うのは、その条件をどれだけ高い精度で実現しているか。

RG-1ならではの技術的な作り込み

RG-1がSG-1から大きく前進している点を、いくつかご紹介します。

多層化されたアクリル・プリンス構造

RG-1は30mm厚のトップ/ボトムプリンス、25mm厚のサブプリンス、15mm厚のミッドプリンスを組み合わせた多段階のアイソレーション構造を採用しています。

12組のデカップラーとチューニングされたシリコンリングが各層を絶妙に切り離し、外部からの振動も、モーターやアームから生じる内部の振動も、層ごとに段階的に減衰させていく仕組みです。

筐体を手で軽くノックしてみると、SG-1にも増して「音が伝わらない」ことが感触として分かります。

メインベアリングの精度

RG-1の心臓部であるメインベアリングは、超高精度タングステン・カーバイド製スピンドルと、航空宇宙グレードのリン青銅製ハウジングの組み合わせです。

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スピンドルを持ち上げた状態、吸い付くように滑らかに回ります。

スピンドルの真円度・同心度は1ミクロン以下、ハウジングとのクリアランスは4ミクロン未満と公称されています。

スピンドルキャップを取り外せる独自構造により、モーター側の振動が軸受からスタイラスへ伝わるのを抑える設計です。プラッターを手で回したときの静かさ、無音感は、これまで触れてきたターンテーブルの中でも最上級のものでした。

以前に各モデルのスピンドルのサンプルを見せてもらったことがありますが、上位モデルになるにつれ、回したときの滑らかさが明確に違います。

新設計トーンアーム「SG-2 TA Pathfinder」

5年の開発期間をかけたという新トーンアーム「SG-2 TA Pathfinder」も、RG-1 PKGの大きな進化点です。

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針圧調整用のオモリは、アジマスを保ったまま水平移動が可能。
アームに対して直角ではなく、レコードの接線方向に対して90度になるよう斜めに取り付けられている点も興味深いです。

3つのシリコン・ナイトライド・ボールとタングステン・カーバイド製ピボットを組み合わせたTPA-ULSベアリングは、ワンポイントアームに近い動きの軽さを持ちながら、ワンポイントの弱点であった接点のスキージング(滑り)を排除しています。

ロール巻きカーボンファイバー製アームチューブと、新設計のチタン製ヘッドシェル。さらにアームチューブ上のステンレス製リングを前後に動かすことで、針圧の微調整はもちろん、エフェクティブ・マス(有効質量)と共振周波数までカートリッジに合わせて最適化できます。

カートリッジを選ばず、それぞれの個性を引き出せる懐の深さがあります。

MG-1やSG-1のアームはワンポイントアームのそれと同じで、針圧とアジマスを兼用したウェイトになっていますが、SG-2 TA Pathfinderは、アジマスと針圧調整が干渉せず独立して行うことができます。その点も含めて、調整はSG-1より簡単になりました。

プレシジョン・モータードライブ「Imperium」が標準装備

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SG-1の世代では別売だったプレシジョン・モータードライブ「Imperium」が、RG-1 PKGには標準装備されます。

デジタル正弦波生成、リニア電源、二重シールド構造。従来モデルのTEMPOから差し替えた際の音の変化量は、以前CALONと併せてご紹介したとおりで、機器をワングレード上げたほどの違いがありました。

トラジ氏自身も、SG-1からRG-1相当へのアップデートを検討する際は、まずモータードライブの交換から始めることを勧めています。RG-1ではこれが最初から組み込まれていますので、土台となる回転の質そのものがSG-1とは別物です。

各部の独立した水平調整ができる

設置・調整の面でも、Vertereにはユニークな特徴があります。

一般的なプレーヤーでは、プラッターの水平を出すことが調整の基本になります。RG-1の場合は、プラッターの水平を出すのは当然のこととして、モーター部分、軸受部分、アームの取付部分それぞれを独立して水平調整できるよう設計されています。

もちろん、出荷時に各部の調整は施されており、頻繁に触る箇所ではありません。

ただし、設置環境や経年の変化、あるいはユーザーがさらなる音質の追い込みを行いたい場合に、こうした微調整の余地が残されていることは、長く付き合うフラッグシップ機として大きな安心材料となります。

音質について

レコード再生とは思えない静けさ

ここからは音の話に戻ります。
針を下ろして、まず感じたのは背景の静けさでした。

「レコードらしい」と言われる、わずかなノイズ感や、音の輪郭をやわらかく包む空気感。レコードだからとそういうものだと思い込んでいてた世界とは異なる音に戸惑います。無音区間が、本当に無音なのです。

それでいて、デジタル的な無機質な静寂とも違います。あくまでアナログの質感を保ったまま、雑味だけがすっと抜けている。そんな印象を受けました。

ディテール再現とレイヤー表現

音色で聴かせるタイプのプレーヤーではありません。そのかわり、ディテールの再現能力が圧倒的です。

付帯音がほとんどない。音が出てから収束するまでが、とにかく速い。そのおかげで、本来盤に刻まれていた微弱な信号まで、丁寧に拾い上げられていきます。ライブ盤だと今まで気づかなった観衆の息遣いや、楽器から音が出る前の動きまでわかります。

特に印象的だったのが、複数の楽器が同時に鳴った瞬間のレイヤーの分離でした。

ピアノの倍音と弦の擦過音、ベースの胴鳴り、ドラムのブラシのざらつき。それぞれが団子になることなく独立して立ち上がりながら、しかし音楽としてはきちんと有機的に絡み合う。

これまでアナログ再生で聴いたことのないレベルの解像度です。

デジタルの新しいステージと地続きの体験

ここ数年、超弩級のデジタル機器が話題に上る機会が増えました。

ある一定以上の物量と技術を投入したデジタルが、それまでのデジタル再生から明らかにもう一段上のステージへ抜けていく現象を、皆さんも何度か耳にされていると思います。

RG-1で感じたのは、それと地続きの体験でした。

アナログにも、従来のアナログ再生からもう一段上の世界がある。それが確かに存在することを、RG-1ははっきりと示してくれます。

物量で振動をねじ伏せるアプローチではなく、構造と精度で干渉を消していくアプローチで、ここまでの世界が描けるのか、と。

馴染みのレコードから、次々と新しい発見がある

聴き慣れたレコードを何枚もかけました。
何度繰り返し聴いたかわからない盤から、これまで気づかなかった音、聴こえていなかったニュアンスが次々と出てきます。

「この曲、こんなに奥行きあったのか」「このパート、こんな細かい仕草があったのか」

そんな発見が、1曲ごとに、ともすると数小節ごとに訪れます。

派手な演出はありません。それでも、気がつくと針を上げるタイミングを逃してしまう。楽しくて、ずっと聴いていたくなる。そういう音です。

設置・調整も含めてご相談ください

VERTEREは、その潜在能力を最大限引き出すうえで、設置と調整がとても大切なプレーヤーです。

以前、開発者のトラジ・モグハダム氏が当店にご来店くださり、取扱説明書には載っていないような細かな調整のコツや、各部の追い込み方を直接ご指導いただきました。その経験を踏まえて、当店ではSG-1 PKGをしっかりと音を追い込んだ状態でリファレンスとして運用しております。

実際にVERTEREのプレーヤーは何度もお客様宅に設置の経験があります。

RG-1 PKGについても、ご興味のある方にはじっくり試聴いただける機会を設けてまいります。設置場所のご相談、既存システムとの相性、カートリッジやフォノイコライザーとの組み合わせも含めて、専門店としてお手伝いさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

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