U-BOYです。
VERTERE(ヴァルテレ)から新形状アルミ製カンチレバー採用のMCカートリッジ「XtraX MC」をお借りしましたので、試聴レポートいたします。
今回、フォノイコライザーはEMT128を使用しました。
XtraX MCの推奨負荷は850Ω – 1005Ωと一般のカートリッジより高めです。
低インピーダンス受けを前提としているEMT128と、インピーダンスマッチングの問題はあると思いますが、1000Ω受けできる他のフォノイコライザーよりも出音でこちらの方が良いと判断しました。
一般的にアルミカンチレバーは普及価格帯のカートリッジに多く採用されています。
高級機のカンチレバーはダイヤモンド、ボロンをはじめとした硬い素材が使われがちです。
また、針先も、より細い物を採用し、高い解像度を狙っている製品が多く見受けられます。
他社の高級カートリッジの多くを測定したところ、ほとんどの製品は10kHz-20kHz にかけて盛り上がってしまっていたそうですが、下図のように XtraXの周波数特性は過去に例がないほど 20kHz までほぼフラットです。
音出しをした最初は、地味だな…高域にアクセントが無いというのは、こういうことなのか…という微妙な印象でしたが、少し聴き込むと背景の静けさや、ピアノやヴァイオリンなど、各楽器の音色がとても自然で、気が付くと音よりも音楽を追いかけていました。
鮮度感や華やかさを求める針ではありません。
とても丁寧で、オケやビッグバンドのような音数の多いレコードでも情報が埋もれず、位置情報やそれぞれの音色を正確に表現します。
固有のキャラクターを持たず、一辺倒な表現にならないのは、同社のレコードプレーヤーにも通ずる世界観です。
スタイラスチップ、カンチレバー、ボディの材質は、音を決める大切な要素だと思いますが、それが全てではないことが良く分かります。
硬質なカンチレバーを採用したカートリッジの音がうるさいと感じる方には一度聴いていただきたいです。
製作者トラジの目指す、「製品の完璧な客観性」を具現化した素晴らしいカートリッジです。