短期間ではありましたが、SGM-10Bを聴かせて頂きました。
スーパー・ゴールド・モニター(SGM)シリーズのSGM-10Bは、1970年代に登場したスーパー・レッド・モニターの置き換えとして、スタジオレコーディング黄金時代の1985年に発表されたSGM-10Bを、現代の技術で復刻させたモデルとなります。
当時のマスタリング現場でよく使われていたモデルとしては、TANNOY SRM10B、SGM10B、TANNOY Super Gold 10″を積んだManley/Mastering Lab ML-10などがありましたが、ダイレクトカッティングでも知られるシェフィールドのダグ・サックス氏、ほかバーニー・グランドマン、アル・シュミットなど、世界の名だたるマスタリングエンジニアらが当時のSGM10を独自に手を加えるなどして使っていたことで知られております。
正面からの見た目の違いは、当時のSGM10Bはユニット上のバスレフポートが1個でアシンメトリーでしたが、現代のSGM-10Bはバスレフポートが2つになっています。
またスピーカーターミナルも1985年に出たSGM-10Bは細めのケーブルしか入らないプッシュターミナル式でしたが、現代版はバイワイヤリング接続が可能なタンノイオリジナルのスピーカー端子を採用し、タンノイ独自のアース端子付きで、アンプとのアース接続が可能となり高周波ノイズの侵入を低減し、中高域の透明度をさらに高めます。
見た目の大きさに反して、持ち上げてみると当時のSGM-10Bの箱よりも密度的にみっしりとした感じで、メーカーサイトの説明どおり、エンクロージャーはかなり堅牢でキャビネット剛性も高い印象です。
またメーカーサイトにも「応答性が高く引き締まった音色」とありますように、当時のSGM-10Bの音を思い出しながら試聴してみても、実際そうした感触はすぐ分かるほど当時のモデルより応答性が向上しており、これは上述しました堅牢なキャビネット剛性からくるものと感じます。
音質は、あらゆるジャンルで聴いてみて素直でクセのない王道な鳴り方が先行し、昨今の高域レンジ方向へ意識的に伸ばしたような不自然さはなく、全体として演出はせず自然なトーンで、普通にただ音楽を鳴らしてくれるといった印象の意味では、やはりモニターの系譜を冠しただけあると思います。
またデュアル・コンセントリックのため当然定位は申し分なく、ステージの奥行きも見通せますし、楽器の配置も分かりやすく、音量を上げても絞っても印象が変化しない点もモニター的といえるかもしれません。
帯域のどこかを誇張したり、脚色するようなこともなく、どのジャンルも淡々と鳴らしてくれますが、だからといって無機質にサバサバとするわけでもなく、全帯域に渡りで音の濃さや厚みを感じさせ、聴き込める感じでさりげなく鳴らすあたりはTANNOYならではと思います。
なんでも無難に鳴らすという言い方はそぐわず、事程左様にこうしてただただ音楽を自然体で卒なく聴かせてくれるように鳴らす音作りであり、じつはそうしたスピーカーは現代の製品では少なくっているかもしれない、ということにも気付かされた試聴体験でした。
ご興味をもたれた方は、ぜひ当店にお問い合わせください。