analogmagik V2 software & Test LPs

U-BOYです。

代理店のご厚意で、analogmagik V2(アナログマジック V2)をお借りしましたので、実際に使ってみた印象をレポートします。レコードの調整を極めたい、かつPCもある程度できる人が対象です。

analogmagik V2による測定
今回は、高さやアジマスなどの微調整が簡単にできるGraham Engineeringをメインに使用しています

最初に結論から言っておきます。

調整を追い込むというよりも、その製品の限界値を知るツールとして捉えた方が面白いと思います。

例えば製品Aと製品Bがあった時に、追い込んだらどちらも同じ数字が出るということは無く、製品Aの限界値、製品Bの限界値はあると思いました。

目次

analogmagik(アナログマジック) とは?

2010年にカナダに創立されたAnalogMagik社は、同名の製品である“analogmagik software & Test LPs”とそれに付随したオプション製品を開発、販売しています。

永年の研究・開発により誕生した“analogmagik”はターンテーブル・トーンアーム・カートリッジ・フォノイコライザーなど、アナログオーディオのセッティング全てにおける細かな状態の測定を、PCを使用して統合的に行える今までに類を見ない先進的なソフトウェアです。

従来のセッティング方法は、レコードを再生しない状態で、アジマス、高さ、針圧などの調整を行っていましたが、アナログマジックはテストLPを使って、レコードを再生している状態で各種パラメーターを確認できます。

事前準備 – 必要な機材

アナログプレーヤー、フォノイコライザーなど、レコードを再生する環境があるのは前提とします。
専用ソフトウェアは、Windowsのみ対応しています。MACでは動きません。
メーカーでは、LenovoのノートPCを推奨しています。

次に、フォノイコライザーの信号を、PCへ取り込むためのA/Dコンバーターが必要です。
ART / USB Phono Plusをオプションとして販売していますが、他の製品でも使用可能です。

フォノイコライザー側にA/Dコンバーターの機能があり、USBでPCへ出力できるモデルであれば、そのまま使用できますが、一部、測定できる項目に制限があります。

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USBオーディオ・インターフェイスもART / USB Phono Plusをオプション販売しています。

事前準備 – 調整

ソフトウェアで各種パラメーターを調整しますが、オーバーハングの調整は正しく行われている前提ですので、事前に正しく合わせます。
アジマス、高さ、針圧などは、測定しながら追い込みます。

調整できる項目

下記項目が測定、調整できます。

・SPEED ターンテーブルの回転速度
・WOW&FLUTTER ターンテーブルのワウ・フラッター値
・AZIMUTH カートリッジのアジマス(左右傾きバランス)※利便性の向上
・VTA カートリッジの VTA=垂直トラッキング角度※利便性の向上
・ZENITH ANGLE スタイラスの天頂角 ※V2から追加。
・ANTI-SKATING トーンアームのアンチスケーティング力
・LOARDING フォノイコライザーの適正インピーダンス
・GAIN フォノイコライザーの出力ゲイン
・VIBRATION システム全体の振動値
・RESONANCE システム全体の共振値
・CHANNEL BALANCE システム全体のチャンネル・バランス ※V2から追加。
・VTF カートリッジの VTF=適正針圧

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出展: https://www.analogmagik.com/zenith

VTA(垂直トラッキング角度)、AZIMUTH(左右の傾き)、ZENITH ANGLE (スタイラスの天頂角)は独立したパラメーターではなく、1つを触れば連動して他のパラメーターにも影響します。この3つの値が、調整のメインになると思います。

全部を紹介すると、膨大な記事の量になってしまうため、実用的な部分を中心に紹介いたします。

ZENITH ANGLE (スタイラスの天頂角

ゼニス・アングルは今回のV2から採用された新しいパラメーターです。
カンチレバーに取り付けられたスタイラスの取り付け位置と角度をZENITH ANGLE(天頂角)と呼んでいます。

一般的なオフセットアームの場合、カートリッジの取り付けは、オーバーハングゲージなどを使ってトラッキングエラーが最少となるNull Pointにスタイラスを合わせて調整します。スタイラスが垂直に取り付けられていない場合,Null Pointからわずかにずれた位置に接地します。このずれを目視で確認するのは非常に困難です。

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調整前

IMD(相互変調歪み)の左右の値の差を小さく、かつできるだけ小さい値になるのが理想です。
7-10%の値だと天頂角が軸から外れている可能性が高く、適切な調整を行うと5%未満になるそうです。

カートリッジのオフセット角を追い込む調整ですが、アジマスと高さに依存しますので、左右の傾きと高さを微調整しながら最適な値を探ります。

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調整後

通常は5%以下なら良いと思います。ここまで追い込むのは、機器の能力値と、運もあります…。

AZIMUTH(左右の傾き)VTA(垂直トラッキング角度)

この2つの項目は同時に測定できます。先に紹介した、ZENITH ANGLE(スタイラスの天頂角)も、同じトラックを使用しています。外周側のNull Point付近を使用することで、トラッキングエラーが一番小さい最良のポイントのひずみを確認しています。

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相関性があるため、先にZENITH ANGLEを追い込むと、アジマスとVTAの値は最初から良好な値になることが多いです。こちらを調整してから、もう一度ZENITH ANGLEをチェックするのが良いと思います。

装置の特性なのか、調整技術不足か、いくらやっても左のIMDの値の方が大きいです。

CHANNEL BALANCE システム全体のチャンネル・バランス

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左右の音圧差を測定します。1dB以下が目安です。
アジマスとアンチスケーティングで調整しますが、これも、ZENITH ANGLE(スタイラスの天頂角)を追い込んだ時点で、音圧差は無くなっていると思います。

AZIMUTHの調整では、クロストークと歪み率を指標としているのに対して、ここでは音圧差の比較です。

VTF カートリッジの VTF=適正針圧

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適正針圧内で、THD(全高調波歪)が低い値を探ります。
7kHzと300Hzのトラックがありますので、両方のトラックで平均的にTHDが低い値が、最適な針圧です。

当店の環境では、適正針圧よりもやや重い値の方が、良い値を示しました。

RESONANCE システム全体の共振値

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システム全体の共振ポイントが確認できます。
例えばアームとカートリッジの相性問題から、取り付けのネジが緩んでいる、設置場所、置き場所の兼ね合いなどに起因します。

共振周波数は8-12Hzの範囲にあるのが良好な状態です。

まとめ 調整後の音質

追い込んで調整したところから測定しましたので、ZENITH ANGLEの値以外は、最初から良好でした。
ただし、このZENITH ANGLEの数字を追い込むのはなかなか大変です。

スタイラスチップの取り付けがずれているかどうかを目視で困難することはほぼ不可能です。
小型水準器をなどを使って、アジマスや高さを厳密に合わせても、スタイラスチップがずれていると、理想的なセッティングが難しいことが分かりました。

もちろん、良い測定値が出た=良い音が出る とは限りませんが、ある程度の再現性があるように感じました。

また、機器の名前は出しませんが、クロストークや共振周波数をみていると、機器固有の特徴で、改善が難しいケースもありました。

機器の特徴を確認するツールとしても大変面白い製品です。

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