U-BOYです。
ドイツacoustical systems(アコースティカル・システムズ)のトーン・アーム、AXIOM(アキショム)をお借りした時の試聴レポートです。
同社では、調整ツールのSMARTractorが有名ですが、トーン・アームもマニアックな仕様です。
セッティングをとことん追い込みたい人向けです。
新旧の有名どころのアームはある程度触っていますが、ここまで細かく調整できる製品は他に思い浮かびません。
その分、調整の時間も掛かります…。
調整ツールのSMARTractorについて
まず先に、調整ツールのSMARTractorについて紹介します。
Axiomには、このSMARTractorが標準で付属します。
デモ機のSMARTractorは単体販売されている商品と同一ですが、Axiomに付属する製品はUNI-DIN専用ゲージです。
SMARTractorは、1ピポッドタイプのアームであれば、基本的になんでも使用できます。
ターンテーブルのスピンドル、アームのピポッドまでの距離を正確に設定するこで、アームの正確な取り付け位置の算出が可能です。
また、内周側のひずみに強い、独自のタンジェンシャル・カーブであるUNI-DINを含む下記5つのカーブを設定できます。
5つのタンジェンシャル・カーブ
1. Baerwald / Loefgren A IEC
2. Baerwald / Loefgren A DIN
3. Loefgren B IEC
4. Loefgren B DlN
5. UNl-DlN
UNI-DINは、一般的なタンジェンシャル・カーブと比較すると中盤以降のトラッキングエラーを小さくする設定です。その他のカーブの場合も、専用ルーペで厳密な調整ができます。
タンジェンシャル・カーブについては、外周/内周で一長一短がありますが、厳密に追い込むことでノイズの低減、左右のセパレーションや見通しなど音質面でも優位になり得ます。
今までひずみっぽく感じたレコードが、盤やカートリッジではなく、調整の問題という場合もあります。
トーンアームのAXIOM(アキショム)について
そして、トーンアームのAXIOM(アキショム)の紹介です。
今回お借りしたのは、シルバーのユニバーサルタイプです。
同社が考えたUNI-DINカーブは、ショートタイプよりもロングの12インチの方がより理想的であり、AXIOMも12インチのロングアームを採用しています。
ただし、ロングアームは搭載できるプレーヤーの制限があるため、アームの取り付け位置とピポッドをオフセットすることで10インチのアームと同程度の取り付け位置を実現しています。
ベースはスタティックタイプの針圧調整となっています。
メインの大型ウェイトと、ラテラル調整を兼ねたバランスウェイトで大まかな針圧を調整し、磁力によるダイナミック方式の加圧で微調整をするようなイメージです。磁力による加圧は、再生中にも可変できます。
また、可動パーツが多く、オーバーハングの調整と連動して各パーツのラテラルが動くため、最適解を見つけるのが難しいです。ここが非常にマニアックな部分です。
さらに、ユニバーサルタイプは、同社のヘッドシェルArche(アーチ)が付属します。
このシェルも非常にユニークで、ラテラルの調整はもちろん、VTA/SRAの高さ微調整できる機構が備わっています。
音質面について
アームの剛性や工作精度の高さと相まって、多くの方がアナログ再生で連想する、温かみ、厚みのあるアナログサウンドです。
重心が低く、安定感があります。ある意味王道だと思います。
リニアトラッキングアームは、左右のセパレーションや内周のひずみに強いですが、支点が動くため、腰高で軽い音になりやすいですが、AXIOMは危うさがなくどっしりとしています。
また、独自の構造とUNI-DINによるタンジェンシャル・カーブの組合わせにより内周部のトラッキングエラーも小さく抑えられています。
アームの正確な取り付け位置から、各パーツの水平だし、ラテラル、オーバーハング調整、VTA/SRA調整などアナログの一連の調整項目が高いレベルで追い込むことが可能ですので、調整の楽しさ、難しさをとことん味わえる製品です。