FINK team BORG episode2 試聴レポート

FINK teamのフラッグシップ BORG がepisode2にモデルチェンジしましたので紹介いたします。

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FINK team BORG episode2について

2018 年に発表された BORG は、世界最大級の面積をもつオリジナル AMT ツィーターと、28cm パルプコーンの2WAY というハイエンドスピーカーとしては誰もが驚くスタイルで登場しました。その後、弟分の KIM を発売し(常設展示中)、また近年は英国 EPOS を買収し ES14N という新しいスピーカーも発表しました。

FINK team のメンバーはすべて FINK AUDIO-CONSULTING のメンバーです。
キャビネット設計の Norbert Theisges(ノルベルト・テイスゲス)、振動対策の専門家である Markus
Strunk(マーカス・シュトランク)、最新 DSP ソリューションや Klippel 測定の第一人者 Shauk Khan
(シャウク・カーン)、ユニット・シミュレーションの Nicola Paparella(ニコラ・パパレッラ)など。メンバー全てがその道のスペシャリストであり、全員が何十社という他メーカーの設計に関わっています。

BORG の発売から 5 年が経過しました。
この 5 年という歳月は彼らに普通のメーカーでは考えられないほど膨大な経験の蓄積を与えました。その全てが注ぎ込まれてアップグレードされたのが、BORG episode2 です。

変更されたのはベース部とネットワーク回路、そしてターミナル部の3か所だけでした。それほど既存の BORG の完成度は高かったと言えます。
実際に店頭で新型を鳴らしてみると、オリジナルのBORGから大きく進化していることがすぐにわかりました。

ENCLOSURE

このキャビネットは、5 年たった今でも完璧な設計でした。

唯一変えた箇所がありました。オリジナル BORG は直立していましたが、episode2 はわずかに後ろ側に傾けています。これはイメージングとサウンドステージを大きく向上させる事に繋がりました。

ベース部の変更によりわずかに後方へ傾いています

CROSSOVER NETWORK

クロスオーバーはパッシブスピーカーの心臓部であり、episode2の最大の変更点です。

基本的なクロスオーバーは 4th order acoustic Linkwitz-Riley(LR4)です。LF と HF の間にタイムディレ
イが加えられています。音のよい部品というのは測定では絶対に見つける事ができないので、正しいものを選択するために膨大な数のコンポーネントを試聴しました。

その結果、以前使用していたムンドルフ製のポリプロピレン・フィルムコンデンサ(150μF)から、12 個
の並列シングル MKT コンデンサに変更されました。PP ベースの一体型コンデンサーより低損失化に
成功しました。

ツィーター部は新たにトランスを使用して、HF ユニットの感度をウーハーレベルに調整することにしました。ツィーターレベルは 6dB 下げる必要がありますが、以前はこれを最高品質の抵抗で行っていました。それでも抵抗は音をほんの少し変えてしまうため、トランス採用による音の改善は本当に大きなものとなりました。トランスはドイツ製の HQ フェライトコアで、最高の機械的ダンピングを得るためにワックス・ポッティングタイプとなっています。

トランスはレベルだけでなくインピーダンスも変化させるので、ツィーター用のメインコンデンサの値
も低くすることができました。このコンデンサもあらゆる製品を試聴した結果、デンマークの専門メー
カーである DUELUND の新タイプ(PP とシルバーのハイブリッド)にたどり着きました。

AMT のフィルターはオリジナル BORG の設計に比べてさらにシンプルにすることを可能としました。
クロスオーバーはキャビネット底部の空洞に設置されています。

TERMINAL PANEL / CONTROLS

スピーカーターミナルは、一般的な真鍮製ではなく低抵抗で接続性の高い無垢の銅をニッケルメッキした重量級です。

オリジナル BORG では 4 つの調整機能を搭載していましたが、5年間のフィードバックから episode2 では2つのコントロールのみになりました。メカニカルスイッチはよりシンプルなブリッジタイプに変更されています。

最も使用される頻度の高かったダンピングコントロールはそのまま残っています。
ツィーターとプレゼンスコントロールはコンシューマー用途では使いにくいと判断し、両者を組み合わせた新しい HF コントロールに変更されました。直列抵抗の変更やコンデンサの追加はここでは行いません。

DAMPING
アンプのダンピングファクターの違いに合わせて適応させる事が可能。
1:ダンピングファクターの高い現代のトランジスタアンプ(標準設定)
2:ダンピングファクターの低い多くのビンテージアンプやクラス D アンプ。または低周波に問題があ
る部屋へ設置する場合
3:真空管アンプに使用する場合
※1 と 2 は全トランジスタアンプに使用可能。3 は真空管専用

HIGH
1kHz から 10kHz の間でレベルを変化させ、トーンバランスをわずかに調整します。最も大きく変化す
るのは 2kHz 付近で、サウンドを少し「前へ」または「後ろへ」調整することが可能です。変化はわず
か±0.2dB 程度ですが、部屋ごとや接続したアンプごとにお好みに合わせて変化させる事が可能です。

音質について

従来のBORGとKIMを比較した場合、BORGはKIMと比べてよりハイファイ志向で、解像度や分解能が高い反面、KIMのような伸びやかでスケールの大きさが出にくい部分がありました。

BORG episode2になったことで、ハイファイ要素を高めながらもスケールの大きいサウンドになりました。前モデルは部分的にはKIMの方が良いなと感じるところがありましたが、今回のバージョンアップで、KIMの完全な上位補完になったと思います。

また、今回試聴期間中に、アンプやケーブル類のデモと重なったので、幾つかの組み合わせで試していますが、素直なスピーカーなので、機器の違いも分かりやすいです。

スケールも大きく、十分な情報量を提示しながらも神経質でうるさくなりません。
分析的に聴こうと思っても、ついつい音楽を追いかけてしまうような訴求力のある気持ち良い音です。