U-BOYです。
以前にCH Precidon「C10 stereo」のデモを行ったことはありますが、セカンドパワーサプライを追加した3筐体のC10 monoでお借りしましたので、改めて紹介します。

CH Precidon – C10 mono について
D/A部分はステレオと同一ですので、設計や思想について、以前の記事もご覧ください。

C10はD/A部分と、電源部分からなる2筐体構成ですが、D/A部分は元々、左右完全独立した構成になっています。電源部を追加することで、電源も左右独立となり、完全な左右独立構造が完成します。
D/A部分を2筐体にした4筐体構成にはなりません。


ツインシャーシ設計とパワーサプライの分離
C10 stereoは、オーディオ回路を収めた本体と、分離された巨大な専用電源からなる2筐体設計です。
電源単体で23kgの重量があり、搭載された巨大なトランスと大規模な平滑回路の圧倒的な物量がわかります。この物理的な分離は、電源トランスが発する電磁的・機械的振動が、繊細なオーディオ回路へ及ぼす影響を根本から断ち切ります。
別電源から供給された電力は、専用ケーブルを通じてオーディオシャーシへと送られます。
内部でさら4つに分離かつ、ガルバニック絶縁された「パワーゾーン」へと分配されます。各ゾーンはそれぞれに専用の超高精度な定電圧化回路を持ち、デジタル処理部、クロック回路、左チャンネルのアナログ回路、右チャンネルのアナログ回路といった、機能的に異なる各セクションにクリーンで安定したDC電力を供給します。
これにより、例えば大電流を消費するデジタル回路の動作が、微小信号を扱うアナログ回路の電源を汚染するといった、回路間の相互干渉を徹底的に排除します。
オーディオシャーシ内部のレイアウトは、左右のチャンネルを基板レベルで完全にシンメトリカルなミラーイメージ設計です。信号経路長やインピーダンス、熱的条件が完全に等しくなるように配慮されています。
さらに、他の10 Series製品で培われた改良型のメカニカル・グラウンディング・システムが採用され 、外部からの微細な振動を効果的に排除し、回路の安定動作を保証します。
モノブロックの必然性、C10 monoのメリット
3台目のシャーシの論理的根拠
C10 stereoからC10 monoへのアップグレードは、驚くほどシンプルです。
セカンドパワーサプライを追加し、配線をつなぎ替えるだけです。これにより、システムはオーディオ部1台、電源2台からなる合計筐体構成の「C10 mono」が完成します。
前モデルのC1.2では、X1(SIngle x2 or Dual x1)もふくめた究極の構成を目指すと最大5筐体構成というハードルの高さがありました。それに対し、C10 monoは、電源を1台追加するという単一のステップで完結します。
C10 monoのメリットは、左右チャンネル間の完全なガルバニック絶縁と電気的分離にあります。
2台の電源シャーシを持つことで、システムは以下のように再構成されます。
1台目の電源:左チャンネルのDACボードとアナログ出力段を含む、左チャンネルのオーディオ回路全体に専用で電力を供給。
2台目の電源:右チャンネルのDACボードとアナログ出力段を含む、右チャンネルのオーディオ回路全体に専用で電力を供給。
これにより、左右のチャンネルは、壁のコンセントからオーディオ信号が出力される最終段に至るまで、電源ラインを共有することが一切なくなります。
これは、オーディオにおけるクロストークという問題を、その根源から解決します。
一般的なクロストークは信号ライン間の漏れ、干渉を指しますが、より微視的なレベルでは、電源ラインを共有することによる干渉も存在します。
例えば、片方のチャンネルが大電流を要求した際、共有された電源にごく僅かな電圧変動が生じ、それがもう一方のチャンネルの繊細な音楽表現に影響を及ぼす可能性があります。
C10 Monoの構造では、このような相互干渉の可能性が物理的に無くなります。
この構成は、C10の4つのディスクリートなパワーゾーンの性能を最大限に引き出すことにもつながります。
音質について
前述の通り、C10 stereoとC10 monoの比較はかんたんに行うことができます。
本体の電源を落とし、パワー・サプライの接続を変えるだけです。
4本のケーブルを1つのパワーサプライから供給するか、左右別々に2台のパワーサプライから供給するかどうかです。
今回は最高のパフォーマンスが出せるように、クロックには同社のT1も用意し、電源ケーブルはクリスタルケーブルを使用しました。
T1は正弦波で固定、C10は75Ω受けとしています。
使用しない出力はすべてOFFにしました。

C10 stereoでも、現代最高峰のD/Aコンバーターであることを前提で話をすすめますが、数曲C10 stereoとmonoで比較をすると、一聴して空間の広がり、前後奥行きの表現、音のエネルギーなど違います。
stereoで聴くのはやめて、monoでひたすら色々な音楽を聴いていました。
価格と場所の制限以外、デメリットがまったくありません。
C10はC1.2と異なり、ボリューム機能がない単一DACです。
出力レベルは最近の機器の中では低い方で、デフォルトが2.5V(1V、2.5V、5Vから選択)ですが、情報量が多すぎるのか、音が小さい感じはまったくしません。
一言でいうとリッチで濃い音ですが、音がほぐれていて細かい弱音の表現も素晴らしいです。
monoを聴きなれてしまうと、stereoの音はこじんまりとして音が団子になったようにさえ感じます。
C10 monoの静けさ、前後空間の定位は素晴らしいです。
昨今、MSB、dCSもふくめてハイエンドDACもアンプのように多筐体、物量投入する方向になってきました。デジタル機器は最新デバイスの優位線は当然ありますが、最新の技術を使った物量投入の音を聴いてしまうと、結局、こうしないと出ない音がある、技術だけではたどり着けない上の世界があると再確認できます。
