DIPTYQUE – DP 140 MKII 試聴レポート

U-BOYです。

日本に輸入が開始されたフランスのDIPTYQUE Audioの平面型スピーカー、DP 140 MKII をお借りしましたので、試聴レポートさせていただきます。

同社のラインナップとしては、5種類サイズがある中のちょうど真ん中のモデルです。

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フランスの工房で職人による手作業で制作されるスピーカーは、細部の仕上げも含めて、機能美を感じる佇まいです。

今回お借りしたホワイトと、ブラックが標準色で、特注で155色のRAL Coloursに対応。
側面の革は、キャラメル、チョコレート、ホワイト、ブラックの4色から指定できます。

従来の平面型スピーカーの課題

従来の平面型磁気スピーカーや静電型スピーカーは、一般的に、大型で薄いダイアフラムと表面全体に均一な駆動を特徴とし、音を前後両方から放射する双極放射パターンです。

これらのスピーカーは、透明感、広大なサウンドステージ、固有の位相コヒーレンスといった強みを持っています。しかし、深い低音域の再生の限界、ダイナミックなインパクトの低下、低い許容入力、そして双極性による部屋との複雑な相互作用といった共通の問題も抱えていました。

DIPTYQUE Audio ー コアとなる独自技術、平面型アイソバリックプッシュプルシステム

従来の平面型スピーカーは、薄い膜が振動して音を出しますが、低音を出すためには膜を大きく動かす必要があり、それが歪みの原因になったり、十分な音量が出せないという問題を抱えていました。

DIPTYQUEのDP-140-MKIIに採用されている「PPBM®(Push Pull Bipolar Magnet)」原理 は、この課題を解決するための画期的な技術です。

「プッシュプル(Push Pull)」
これは、2つの振動板(ダイアフラム)を向かい合わせに配置し、互いに押し引きするように動かす仕組みです。これにより、それぞれの振動板が単独で動くよりも、はるかに効率的に空気を動かすことができます。

「バイポーラマグネット(Bipolar Magnet)」
通常のスピーカーでは振動板の片側にしか磁石がないことが多いですが、この技術では振動板の前後両側に強力な磁石を配置しています。これにより、振動板の動きを完璧に制御し、常に安定した磁場の中で正確に動かすことが可能です。

「加圧ゾーン(密閉された加圧チャンバー)」
2つの振動板の間に、まるで空気のクッションのような「加圧ゾーン」を作り出します。このゾーンの空気を効率的に利用することで、振動板の動きを最小限に抑えながらも、より多くの空気を押し出すことができ、深くてパワフルな低音を生み出します。

DP-140-MKIIは、薄い平面型スピーカーでありながら、このPPBM技術によって、まるで大型のウーファーが搭載されているかのように、深く、速く、そして歪みの少ない低音を再生できます。

そして、スピーカーとしては、音を前面と背面の両方から放射する「双極子(Dipole)」として機能し、広々とした自然な音場を再現します。

この独自のシステムから得られる利点は多岐にわたります。
まず「効率を高め、低周波数応答を拡張する」ことが可能となり、より深い低音を実現します。
次に、「ダイアフラムの振幅を低減する」ため、歪みを低減し、直線性も向上 します。さらに、プッシュプル対称性は本質的に相互変調歪みを低減するため、特に複雑な音楽パッセージにおいて、全体的な明瞭さと細部の再現に大きく貢献します。

また能率87dB、インピーダンス(6Ω)で、一般的なスピーカーと同程度です。
極端なインピーダンス低下によるアンプへの負荷もありません。

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PPBM (Push Pull Bipolar Magnet)

PPBM (プッシュ・プル・バイポーラ・マグネット)

大きな断面を持つ特別設計のバイポーラ・マグネットが振動板の前後に取り付けられ、ボイスコイル(アルミ・リボン)を一定の磁界で保持します。

これにより振動板は完璧にコントロールされ、ダイナミックな低音とトランジェントの正確な再現を実現しています。

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C-PPBM

C-ppbm リファレンス専用MKIIテクノロジー

各ベース・カートリッジは、2つの独立した巻線(1つは垂直、もう1つは水平)によって駆動されます。この設計により、22μmのマイラー膜が何百もの小さな正方形のモーターで振動し、歪みのない均一な振動を実現します。クロスプッシュプル これにより、従来のアイソダイナミック・システムをはるかに凌ぐ極めて低い歪みと効率で、非常にリニアな低音を実現します。

音質的特徴について

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試聴にはアンプがSoulnoteのP-3およびM-3X、デジタルはdCSのBartok APEX DAC+を中心に、一部アナログも使用しました。

当店の試聴室は40畳以上あります。

DIPTYQUEは従来の平面スピーカーよりも背面との距離関係はシビアではないと感じましたが、スピーカーとリスニングポイントの距離が遠すぎると、ややエネルギーが減衰する印象を受けましたので、いつものフロア型スピーカーの設置位置よりも気持ち前にセットしました。

一般的な平面スピーカーと比べると、柔らかくフワッと軽やかな音の中に、しっかりとした芯があります。スッと音が立ち上がるので、微小信号の再現力が極めて高いです。録音の粗や暗騒音まで明確に表現します。

簡単にスピーカーの存在が消えます。
振り角やリスニングポイントとの距離は敏感に反応します。

低域の再現力については、同サイズの他社平面スピーカーよりは、かなり出ていると思います。音のタメがなくスッと出て、すぐに消えるような音なので、ゆったりとした低音に慣れていると、体感的に量感は少なく感じるかもしれません。

その佇まいも含めて、余計なキャビネットの響きなどから開放された没入感のあるサウンドです。
音色で聴かせるタイプではなく、音源に対する忠実性も高く、極めて現代的な表現です。

従来の平面型の良さの延長線にあるサウンドだと思います。

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