MoFi フラグシップターンテーブル「MasterDeck Reference Turntable」 試聴レポート

U-BOYです。

MoFi Electronicsのフラッグシップ・ターンテーブル「MasterDeck」を短期間お借りすることができましたので、実際に使ってみた印象をレポートします。

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MasterDeck Reference Turntableについて

MoFiのアナログプレーヤーを語るうえで、まず、設計者のアレン・パーキンス氏について紹介します。SOTA、Immedia、そして自身のブランドであるSpiral Grooveで数々の銘機を生み出してきた彼は、アナログプレーヤー界の生きる伝説です。

親日家でもあり、過去に当店にも来店されたこともあります。
Spiral Grooveはかつてリファレンスのプレーヤーとして展示しておりましたので、このデザインは既視感があります。聴く前から期待感が高まります。

彼の設計哲学は、常に一貫しています。

  • 音楽表現への絶対的な忠実さ
  • レコードに刻まれた情報の完全な引き出し
  • 徹底的なノイズの排除による「静寂」の追求

かつて理想を追求して制作されたSpiral Grooveのターンテーブル。その設計思想と独自技術を、より多くの音楽ファンに届けるために生み出されたのが、このMasterDeckです。

1. 静寂の深淵へ ー 徹底されたノイズ対策

優れたアナログ再生の第一歩は、不要な振動やノイズをいかに排除するかにかかっています。MasterDeckは、パーキンス氏の哲学を体現する「静寂設計」の集合体です。

心臓部を担う、スパイラルグルーヴ式インバーテッドベアリング

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氏の代名詞とも言える「Encapsulated Spiral Groove Inverted Bearing」を搭載。ベアリング面にオイルを循環させる溝が、摩擦と摩耗を限りなくゼロに近づけます。ベルトと一直線に配置された堅牢な設計と相まって、プラッターに驚異的な安定性をもたらし、深淵な静寂の源となります。

レコードと一体化する、ハイブリッド・プラッター

質量約6.5kg、厚さ約45mmを誇るプラッターは、Delrin®とアルミニウムのハイブリッド構造です。レコード盤の素材(ビニール)と極めて近い特性を持つDelrin®が不要な振動を吸収し、外周に重量を持たせたアルミニウム層が慣性モーメントを高め、回転の安定性を完璧なものにします。

外部振動を遮断する、HRSアイソレーションフット

オーディオ用制振アクセサリーの最高峰、Harmonic Resolution Systems (HRS) 社が専用設計したフットを採用。プレーヤー全体を効果的に「浮かせ」、設置環境からの振動を徹底的に遮断します。高価な後付けアクセサリーでしか得られなかったレベルのアイソレーションが、標準で装備されています。

2. 10インチ・カーボンファイバー製トーンアーム

MasterDeckの10インチ・カーボンファイバー製トーンアームは、パーキンス氏の長年の経験が生んだ革新的な機構を備えています。

「良いとこ取り」のハイブリッド・ベアリング

アレン氏のトーンアームは、一貫してワンポイントを採用してきましたが、アジマス調整が手軽に調整できるように、相反する長所を融合させたジンバル構造とのハイブリッドを採用。水平軸受けにルビーボールを用いることでユニピボット特有の不安定さを解消し、針先が溝を正確にトレースすることを可能にします。

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ジンバル構造を取り入れているため、アジマスはカートリッジの根本で行います

「MasterDeck」の名を冠するゆえん

垂直方向のジンバル部には、トーンアームに要求されるスペックを遥かに超えるABEC7規格の高精度ベアリングを使用。この「徹底したこだわり」こそが、本機が「マスター」の名を冠する理由の一つです。

芸術的なカウンターウェイト設計

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Spiral Groove独自の「Centroidカウンターウェイト」の思想を受け継ぎ、幅広い重量のカートリッジ(5g〜14g)に対応。重心を支点近くに保つことで慣性を低く抑え、カートリッジの性能を最大限に引き出します。

レコードをトレースするスタイラスと、プラッターの支点、トーンアームの支点の高さをできるだけ同じにするという思想は従来通りです。音の安定感に大きく寄与しています。

3. ドラマーの感性が宿る ー 正確無比なリズム

パーキンス氏は「音楽の躍動感は、速度の揺るぎない一貫性から生まれる」と語ります。彼のドラマーとしての感性は、駆動系にも生かされています。

センサー制御の三相ブラシレスDCモーター

完全にアイソレートされた静粛なモーターが、比類なきレベルで正確な回転を維持します。

独自の速度監視システム

多くのプレーヤーと異なり、再生中に常に速度を監視・補正するようなことはしません。起動時に一度だけ完璧な速度を設定し、あとはモーターの精度にすべてを委ねる。この設計思想が、不自然な揺らぎのない、生きたリズム感を生み出します。33.3/45/78回転に対応し、精密なピッチ調整も可能です。

実際の音質は?

試聴は、同社のUG UltraGold MC付きのパッケージで行いました。
フォノケーブルはL型の着脱式ケーブルが付属します。代理店の話では、このケーブルのクオリティーもこだわっているようなので、付属のケーブルを使い、イコライザーはSoulnote E-2を使用しました。

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フォノケーブルはL型の着脱仕様

まず、プラッターの回転がとても滑らかで安定していると感じました。
HRSアイソレーションフットと、アームのトレース能力の高さによる相乗効果でしょうか、とても背景が静かで落ち着いています。

Spiral Grooveの要素も彷彿とさせますが、オイルダンプで一時代を築いた、Well Temperedのプレーヤーの音を思い出しました。

トレース能力も高く、内周でも歪っぽさが少ないですし、再生中にターンテーブルをコツコツ叩いても針飛びもしません。アレンらしいプレーヤーの勘所を押さえた設計だと感じました。

今回は時間の関係で、同社のカートリッジしか使えませんでしたが、常用しているLyraや光カートリッジの組み合わせでも試してみたいと思いました。

調整も合理的でかなり簡単な方ですし、本格的なハイエンドシステムに組み込んでも十分に楽しめるプレーヤーです。

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