Riviera AIC10-Balを聴いてみました

U-BOYです。
イタリア、Riviera Audioのヘッドフォン/プリメインアンプ AIC10-Balをお借りしました。

リビエラ社の設計者であるルカ・キオメンティは、オーディオの高調波歪みの挙動が私たちの耳とどのように相互作用するかをより深く理解し、独自の心理音響モデルを開発して自身のオーディオ設計に取り入れています。この心理音響モデルについては、ここでの詳述は避けますが、詳しくは代理店ページをご参照下さい。

AIC-10は海外ではヘッドフォンアンプとして有名になりましたが、プリ・アンプ部に三極管バルブ(ECC82/12AU7型)を採用した純A級ハイブリッド・インテグレーテッドアンプでもあります。ヘッドフォンアンプ部は2系統あり、フロントパネルにアンバランス1/4 “フォーンジャックとバランス4ピンXLRコネクターを備えています。また3系統のライン入力とヘッドフォン/スピーカー・モードの切り替えができるポリッシュ仕上げのアルミニウム製ノブが3つあり、ボリュウムカーブも使いやすく精度の良さを感じます。

シンプルで分かりやすく配列された操作ノブ

内部は非常に丁寧に組まれている印象で、両面回路基板は厚さが1.6mmではなく2mmに設計され、銅トレースの厚さも3倍。手作業で基板に取り付けられたはんだ処理もキレイで、非常に優れたビルド・クオリティといった印象です。
前面、背面は80mmの無垢アルミニウムから削り出され、フロントにはブランド名と製品名がきれいに刻印されていますが、筐体の塗装工程は11工程にもなるようです

電源まわりはイタリア製2つのハンドメイド・トランスと、様々なオーディオ・セクションのための5つ独立した安定化電源によるハイブリッド設計。

一つ一つ丁寧に組み上げられた内部パーツ


回路的にはダム的な大容量コンデンサーではなく、瞬発性重視でいくつかの小容量コンデンサーによって組まれており、これにより極めて高速な電源供給能力を狙っているようです。
信号経路の昇圧三極管回路はコンプリメンタリーMOS-FET出力段で、0.2%THDで8Ω時2×10ワットのパワーとメーカー発表ではかなり控えめですが、僅か1%のTHDであればチャンネルあたりのパルス・パワーは30ワットと驚異的なもので、高能率なスピーカーであれば問題なくドライブできるのでプリメインとして十分機能します。

筐体デザインはシンプルですが、質感、剛性ともに高いです

まずヘッドフォンの試聴では、Dan Clark AudioのSTEALTHとEXPANSEで試聴を行いましたが、どちらの特色も非常にでており、情報量も多くのびやかさが感じられました。どちらもドライブしづらいヘッドフォンで有名ですが過不足なくドライブできており、とてもこのコンパクトなボディーから出力されているとは思えない素晴らしい世界観を表現してくれていました。真空管特有の音色だけに頼らずニュートラルな表現の中に一本筋の通ったリファレンス的な音が出ており非常に魅力的に感じました。

Dan Clark AudioのEXPANSE

次にプリメインとしての音質ですが、ハーフサイズな筐体と控えめな公称スペックとは裏腹に、小型~中型ブックシェルフ、感度が高いフロア型であれば鳴らしてしまう力感があります。

そしてルカ・キオメンティの音響心理学的な知見からの設計コンセプト、また実際のヒアリングでの音を重視した開発思想や哲学が反映されている印象で、その再生音にもそうした確固たる信念が現れており、どんなジャンルも歪感なく上質で丁寧、音色的にも甘美な描写のしかたで、音ではなく音楽をちゃんと聴かせてくれます。

リアパネルの入力はバランス1系統、RCA2系統

なおリビエラにはゴールド、チタニウム、2種類のカラーバリエーションがあります。

音質的にこだわり、インテリア的にもシンプルにまとめたいという方には非常にお薦めできる逸品ではないかと思います。

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