Western Electric 91Eを試聴しました

U-BOYです。

Western Electric 新製品 No.91E を試聴しました。

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Western Electric 91E のモデル名は、1936 年のWestern Electric 91A に由来しますが、その91A とは見た目もまったく異なった革新的なデザインで、現代の技術により300B用に設計された一体型シングルエンドアンプです。

ウェスタン・エレクトリックの特許技術であるSCS(Steered Current Source)を採用。このユニークなパラレル・フィード・トポロジーは、静止電流を変調することにより、交流電流の半分を300Bのプレート(アノード)に供給。その結果、電力損失の半分が真空管で発生し、より大きな出力を可能にします。(後述しますが、91Eの定格出力は8Ωで20Wpc、THDは10%です。)

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スイッチを入れると、1914 年のウェスタン エレクトリックの「スピリット オブ コミュニケーション」 ロゴが 10 秒間表示され、その後30 秒のプリヒートのためのカウントダウンがはじまり、さらに30秒自動真空管バイアスのカウントダウン後起動します。起動後ディスプレイはパワー出力を示す垂直メーターに変わり、ソースが横に表示されます。

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300Bはガラススリーブに収められ、左右のWestern製ECC81との間にはスピーカーに応じた交換式の出力トランス(標準は8 Ω)ブロックがあり、オプションで4 Ωまたは16 Ωのバージョンと交換することができます。

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起動後の300Bを確認すると、ダル・エミッターを彷彿させる、ほのかな明るさで点灯しているのが確認できます。これを見るだけでも本アンプから、どんな音がするのかワクワクします。

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ボリュームに使用されているステップ式対数アッテネーターは0.5dB刻みで、抵抗器はラダー構成のディスクリート抵抗のみで構築され、回路の入切によって出力信号に対数的な減衰(音量変化)を生じさせます。このステップ・アッテネーターは、モーター駆動のポテンショメーターに比べノイズが少なく、チャンネル間の追従性に優れています。このマイクロプロセッサー制御のステップ・アッテネーターは、リレーを使って回路内の各ディスクリート抵抗を作動させ、DACをエミュレートするソフトウェアで実現しており、オーディオ・テーパのアルゴリズムにより、人間の聴覚を補完します。

そのため人間の聴覚応答に即した特性になっていることもあり、音量調整時での回転操作フィーリングと追従応答性が素晴らしく、ボリューム精度において全く違和感を感じさせません。

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大型トロイダルトランス はECC81 および 300B HTプレート用のリニア PSU に電力を供給し、左上の黒いスイッチモード PSU は三極管フィラメントに電力を供給します。大型ディスプレイは中央のRaspberry Pi コンピューター モジュールによって制御されます。

 入力は、非常に多彩でライン入力のみで4系統とさらにフォノ入力(MM、MC)もあり、多岐にわたりコンポーネントの接続が可能です。

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真空管アンプで、心配されがちな安全面においてもファームウェアにより監視されているため、使い勝手は並みのトランジスタアンプよりも良いかもしれません。万一ファームウエアアップデートが必要な場合も裏側から簡単に行えるようになっています。

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先述しましたとおり、本機の構成はECC81と300Bの2段シングルですが、その定格出力は300BをクラスA2、グリッド・ドライブ・プラスで動作させていることもあり、8Ω・THD 10% において20Wもあります。ご存じのとおり300Bの2段シングルアンプにおいて通常ありがちな回路では、8Ω・8Wそこそこが関の山です。

300Bのスペック上では、もちろん450V近いプレート電圧をかけることはできますが、高価な球ということもあり、設計者の観点ではわかっていてもなかなかできないのが本音です。

そこは、素子メーカーの強みと球に対する絶対的な信頼感があればこその本設計になっているのでは、ないかなと思えてきます。また低出力時でも高調波歪みと相互変調歪みのレベルが高いので、現代的なスピーカーの組み合わせでも意外とイケます。

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実際音を聞いてみると、他の300Bアンプとは一線を画す非常にすっきり伸びやかな中高音と、独特のパワー感がうかがえます。300Bアンプ特有な魅惑的な表現はもちろんあり、ソースによってはこのアンプでしか味わえないの良さを感じます。現代的なスピードの速い曲においてもしっかりと反応してくれますので、本当に真空管アンプなのかなと疑ってしまうぐらい素晴らしく、弱点がありません。真空管アンプに苦手意識のある方には、ぜひ一度お聞きいただきたい逸品です。

ご興味を持たれた方は、ぜひ当店にお問い合わせください。

         

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