MAGICO M7を聴いて来ました

10日ほど前に、エレクトリさんのご好意でMAGICO M7を聴かせて頂きました。

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エレクトリさんの試聴室は約2年前にM9を聴かせて頂いて以来の訪問でしたが、試聴室に入るやいなやまず目に飛び込んで来たのは横向きに置かれたM9で、次にM7という視線の流れでした。

M9が後方にあるせいか一瞬ずいぶんコンパクトだなと感じましたが、試聴室横に置かれたS3MK3や日本音響SYLVANに気づいて見比べると、大きさの認識に齟齬を来していることに気づきました。

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M7の実際の高さは163cmあり、M6と比べても20cm背が高いことになります。ただ正面からみた身幅は48cmとM6の51cmよりも若干細く、奥行きは73cmでM6の66cmより7cm増えており、横方向から見たときに存在感と風格を感じました。

とはいえ正面からの見え方がスリムな印象なのは、トップからボトムにかけての絶妙な流線ラインからくるデザインの良さがあるからなのでしょうが、全方向からみても非常に洗練されたかっこよさをさり気なく纏った佇まいで、うまくまとめられたデザインフォルムと思います。

サイドから見るとそれなりのボリューム感がありますが、バッフルやトップパネル、ベースなどのほかはカーボンモノコックボディということもあって重量は239kgと比較的抑えられた重量なので、前シリーズのQ7(340kg)のときのように設置場所の床強度をそれほど心配する必要はなくなりました。

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デザイン的にうまくまとめられ、正面から見ると意外とスッキリコンパクトに感じる筐体

早速試聴させて頂きましたが、音源をかけ始めた直後に静寂と暗闇の中からフッとなにか現れる気配を感じるかの如く暗騒音が聴こえ、そこから最初の一音を発するまでのわずかな間隙で、独特の恐怖感というか文字通りゾワゾワとしたものを感じさせられる点はM9と同じで、これは恐らくスピーカーそのもののSNが驚異的に高いためかと思います。

この暗騒音を感じながら音が出るまでの部分で、瞬時に聴覚だけでなく五感や毛先まで神経を張り巡らせる感じで「よし聴くぞ」と端座して挑む雰囲気におかれるのですが、その場の空気を一瞬で変えてしまうのはマジコMシリーズならではの通過儀礼のようなもので、M9、M7では特にそれを強烈に感じさせられます。

このゾワゾワとくる通過儀礼を経て実際耳に入ってくる音は、ガツンとくるエネルギーと密度の均一さ、全帯域のフラットなまとまり具合を尋常ではない”早さ”を伴ってあっけなく鳴らしてしまうため、本当にこの大きさのスピーカーが鳴っているのか、という知覚のバグを生じてしまいます。

中域は超高精度のマイクロスコープを覗いているかのように異様に解像度が高く、録音時のマイク位置までわかりそうなほど精緻な分析力でモニタースピーカーライクですが、モニタースピーカーにありがちは無味乾燥で凡庸な中域表現ではなく、マジコMシリーズならではの魅力あるリッチで窈窕たる音は健在で、この独特の中域表現は代替不可能性を感じるほど不思議な魅力があります。

ツィーターはM9用に設計されたものと同じ28mmドライバー採用し、最適化されたジオメトリを持つベリリウム振動版を使用に化学蒸着によるダイヤモンドコーティングを施されており、定評ある中域表現を担うミッドレンジ・ドライバーは、アルミハニカムコアにグラフェンを含んだ強化炭素繊維の外装と内装でサンドイッチしたGen8Nano-Tecコーンを採用。磁気回路部にはネオジウムベースの2つの超大型マグネットを使用して磁場の安定化を促進しています。純銅のポールキャップは過電流を最小限に抑え効率を最大化。これによりより速いセトリングタイムと驚くほどの低い歪みを実現したそうす。

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M9と同仕様の28mmツィータードライバーとGen8Nano-Tecコーンの5インチミッドレンジ・ドライバー

ミッドバス・ドライバーは9インチで、新設計バスケット・アッセンブルとアルミハニカムコアをグラフェンを含んだ強化炭素繊維の外装と内装でサンドイッチしたen8Nano-Tecコーンで構成されています。127mm系のボイスコイルとアンダーハングのネオジウムべースの磁気回路が搭載され、通気孔を備えた純チタンボイスコイルボビンにより安定したピストンモーションを実現し±13mmの振幅を誇り、この高感度ドライバーはバンドパスで120db@1mの出力が可能。さらにこのミッドバスセクションは、パワーを必要とする低音域と分離されています。

ベース・ドライバーもミッド同様の構成による新設計の12インチで、大型の銅キャップと通気孔を備えた純チタンボイスコイルボビンにより±15mmの安定したピストンモーションに貢献し、さらに新しい複合素材のスパイダーは振動歪みのない優れた放熱性を保証し、このドライバーは1m距離で測定した際にバンドパスで120dbSPL@25Hzの出力が可能とのことです。

低域は厚みとボリューム、ウォームさがあり、それにも関わらずセトリングタイム、ディケイタイムのコントロールは妙妙たるものがあり、もたつきやルーズさは一切なく、生録系、打ち込み系であってもその印象は同じで付帯音のまとわりや、低域の回り込みも感じないのは見事です。フロントバッフルマテリアルが分厚いアルミで、ほかはカーボンモノコックというハイブリッド筐体だからこそ得られる表現と思います。
これに先述した高域表現が加わると、見晴らしがよい場所で広大な景色を見るような爽快さと、冬の快晴の空を見上げたような清々しい抜けっぷりをみせ、左右に大きくパンニングされた録音ではサラウンドシステムかのようにダイナミックかつ広々と展開し、エコー成分は品よく透き通るように空間に広がり、残響音と余韻は消えいる寸前まで伸びて聴こえ、ホールトーンはその場にいるかのような臨場感溢れる表現で驚歎させられます。

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グラフェンを含んだ強化炭素繊維外層と内層でサンドイッチしたGen 8 Nano-Tec振動板を採用した9インチのミッドバス・ドライバーと12インチのベース・ドライバー

とまれ、全体域に渡って高解像度でフラットレスポンス、密度の高さ、そしてエゲルギー感を維持しつつ、ただオーディオ装置で音を鳴らすのではなく、音楽を聴かせてくれるインテレクチャルな鳴り方にまとめあげるアーロン・ウルフ氏の手腕と感性には驚させられます。

いくつかのトラックの試聴ポイントを中心に聴いた後、エレクトリS氏からテクニカルな解説を受けました。
驚いたのはネットワークで、デンマークのデュエルエンド・コヒレント・オーディオとドイツのムンドルフのものが採用され、前者はそれだけでも単体で数十万もするパーツを採用しているそうで、それらが各ユニット分搭載されているとのことでした。この最も先進的でコストがかかっているの楕円対称クロスオーバー(Elliptical Symmetry Crossover:ESXO)ネットワークは、6つのドライバーを仮想的な点音源に完璧に集約し、6 つのドライバーがまるで一つのドライバーのようにシームレスな滑らかさで音楽を再生するとのことです。

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過剰というより過激な物量投資がされたクロスオーバー・ネットワークパーツの一部。

キャビネットは一般的な板状素材を用いた製造法では不可能で、有限要素解析モデリング(Finite Element Modeling:FEM)を用い考案されたモノコック構造のファイバーシェルと6061-T6アルミニウム製バッフルで構成され、この航空宇宙用複合材を使用した拘束層減衰を持つ多重構造の6061-T6アルミ製フロント・バッフルは、前後方向に伸びたテンションロッドによってリアバッフルと連結されています。その結果、内部共鳴がほとんど生じないエンクロージャーが完成したとのこと。フロントバッフルの形状はほとんど屈折効果が計測不可能なレベルまで改良され、M7のエンクロージャーはすべてのパラメーターで最大の強度を持ち、極めて高い剛性を備えながらエネルギーの蓄積を最小限にした、まさにサイレント・エンクロージャーとのことですが、こうしたことも高いSNを齎すのだと感じます

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内部共鳴がほとんど生じず、高いSNを齎すサイレント・エンクロージャー

また毎作品ごとにマジコならではの拘りを感じさせられる足回りの造りですが、それだけ単体アクセサリーにしたら相当高価な値段になりそうなMPOD技術はM7でも踏襲され、カーボンファイバーとクロームの絶妙な組み合わせによって視覚的にも美しく仕上げられてており、リア側のクローム・キャップパーツを回して外せば、スパイク高さ調整ボルトにすぐアクセスできるようよく考えられた仕様になっています。

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後方側(写真左側)は高さ調整を考慮した構造でありつつ、キレイなクローム仕上げ。
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その後パワーアンプをつなぎ換えてもらっての試聴もしましたが、これもまた驚くほどパワーアンプの音の違いをハッキリ描き分け、録音ソースのみならず、接続した機器による違いも明瞭に顕示する能力が高いことも分かり、それまでに試聴していた楽曲の聴こえ方や印象などが、違った味わいで聴ける点も魅力的でした。

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アーロンウルフ氏のサインプレート

この試聴時より少し前に、アーロン・ウルフ氏が当店に立ち寄って頂いた際、如上に述べましたようなオーディオ機器に使うには過剰なほどのハイテクマテリアルやハイグレードパーツを投入することや、他社では真似のできない設計手法を取り入れることで、プライスが高額になりすぎる点がネックだとアーロン氏自身も述べていましたが、M9やM7が出してくる実際のその音の凄みを聴いてしまうとそれも宜なるかな、という感想に至る試聴体験でした。

マジコMシリーズにご興味がある方は、是非当店までご相談下さい。

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ーオマケ画像ー

あまり見る機会がないM9のサイドビュー。バッフルやカーボンも有限要素解析モデリングによるフォルムで、成形精度を出すのも難しそうですが、かなり凝った曲線美で構成されていることが分かります。

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