VERTERE(ヴァルテレ) – CALON、IMPERIUM 試聴レポート

U-BOYです。

VERTERE(ヴァルテレ)のフォノイコライザーCALONおよび、プレシジョン・モータードライブのIMPERIUMをお借りしましたので、レポートします。

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VERTEREが満を持して発表した最高峰フォノアンプ「CALON(カロン)」。ウェールズ語で「心」を意味するその名の通り、レコードに刻まれた奏者の魂までも鮮やかに再現するために、トラジ・モグハダムの妥協なき設計哲学により制作されました。

RIAAカーブ専用、入力はRCA入力1系統ですが、あらゆるMC/MMカートリッジとマッチングできるように精密な調整機能を備えています。

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フロントパネルは、シルバーの他にブラック・アルマイト仕上げが選択できます
目次

フォノイコライザー、CALONについて

CALONはお使いのカートリッジに合わせて細かい調整ができます。
具体的な調整項目について紹介します。

きめ細かなゲイン設定

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ゲイン設定は、入力ゲイン(RIAAカーブ処理前)と出力ゲイン(RIAAカーブ処理後)でそれぞれ設定できます。
MMとMCはゲインの違いだけで、MM標準のポジション45dBを基準とし、入力ゲインは+10dB、+20dBの3段階、出力側は0、+2、+4、+6、+8の5段階の切り替えができます。可変幅は45-73dBです。
入力ゲイン側で最適な音量が得られる場合は、出力はゲインを使わないことを推奨しています。

一般的なフォノイコライザーは、RIAAカーブ処理後に必要なゲインを与えます。RIAAカーブ処理前に必要なゲインを与える製品は珍しいかもしれません。通常は、昇圧トランスやヘッドアンプの役割に該当します。
これも、音の純度に大きく貢献しているように感じます。

LFフィルター、位相切替

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サブソニックフィルターは、反っている盤や、過度な低域エネルギーが録音されている場合に、スピーカーの異常な振幅を抑えるために使用するのが一般的ですが、本機の場合は、常時ONを推奨しています。
実際に比較してみると、劇的な違いではないですが、ONにしたほうが明瞭度が高く、副作用も感じません。以降の試聴でもフィルターはONにしています。

位相切替スイッチも搭載しています。

負荷抵抗、負荷容量

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インピーダンスは、100Ωから47kΩまで9段階で設定できます。

カートリッジ側がインピーダンスを指定しない限りは、カートリッジのコイル抵抗の20-40倍を目安に設定します。

例えば、カートリッジのインピーダンスが10Ωであれば、200Ω~400Ωにします。
LyraのAtlasλのインピーダンスは 4.2Ωですが、フォノアンプのMC入力に接続する場合、104Ω~887Ωを推奨していますので、この場合はLyra側の指示に合わせます。

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MCで負荷容量の設定ができるイコライザーは稀だと思います。

MCカートリッジの中には、通常1-2kHzから上昇を始め、高周波が約2dB、多い場合6dBまで上昇する非線形な周波数特性の製品も存在します。
このような場合、正しい負荷容量を選択することで、高周波の上昇を抑えることができます。


グラウンド

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グラウンド/アース処理においても柔軟な設計を採用しています。

背面パネルには、トーンアーム用とシャーシ用の独立したアースポイントを装備しています。各チャンネルには3段階のアーシングスイッチが設けられており、低抵抗の「ハードグラウンド」、アース接続なしの「リフト」、高抵抗の「ソフトグラウンド」から選択可能です。

ハムノイズなどの問題がない限り「ソフトグラウンド」の使用を推奨していますが、ノイズ問題が発生した場合は他のオプションに切り替えます。多彩なグラウンド設定により、様々な機器との組み合わせや設置環境に柔軟に対応することができます。

音質について

純正の組み合わせである、SG-1PKGを使って試聴しました。カートリッジはLyraのAtlusλです。

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一番最初の印象は、自然で素直な音であることです。

気持ちよく伸びやかに歌う感じは、Vertereのプレーヤーと同様です。
すっと音楽が入ってきます。
また、SNも高く、背景の静けさも最高レベルです。誇張した感じがまったくないので、パッと聴くと地味に感じるかもしれませんが、今まで音として認識できなかったような微小信号の暗騒音も音楽として認識できるようになりました。

付帯音がなくソースに充実です。弦楽器もよいですが、特にピアノの質感が素晴らしいと感じました。

音色で聴かせたり、分かりやすい厚みを加えたりする音ではないので、玄人好みかもしれません。音を注意深く追っていても、気がつくと音楽を聴いてしまうような魅力があります。


プレシジョン・モータードライブ、IMPERIUM

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左は従来のTEMPO、右がIMPERIUM

Imperiumは、デジタル正弦波生成システムを採用したレコードプレーヤーのモーター制御装置です。

高品位なパーツ選別、リニア電源搭載、二重シールド構造による徹底したノイズ対策を特徴としています。トラジは従来の回転調整機能を意図的に省き、代わりに正確な一定速度での回転を重視する設計思想を採用しています。さらに、モーターノイズを最小限に抑えるためのLEVELとPHASE調整機能を備えています。

また、レコードの製造過程で生じる回転速度のばらつきに対応するため、Imperiumは各レコードの再生時に簡単なノブ操作で回転速度を調整できる画期的な機能を搭載しています。これはレコード制作の経験を持つトラジ社ならではの革新的な設計で、従来型の回転調整とは異なり、長期的な回転の安定性も確保しています。

音質について

従来のTEMPOから差し替えて比較しました。

一聴して、音に厚みが加わり、スケールの大きい音になりました。
正直、ここまで変わるとは思いませんでした。機器をワングレード上げたくらいの変化量です。

SG-1PKGは、RG-1PKGにアップデートが可能です。
プレーヤー、アーム、モータードライブのどこからでもアップデートする事ができますが、トラジ本人は、モータードライブの交換を最初に勧めています。
この変化量を聴くと納得せざるを得ません。

単にモーターに供給する電源だけではなく、デジタル正弦波を生成する機器だからでしょうか。
にわかに頭では理解できない変化の大きさです。

トラジ・モグハダム氏が来店されました

先日、開発者であるトラジ・モグハダム氏が店舗を訪れてくれました。

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プレーヤーの細かい調整を氏より直接ご指導いただきました。
取説には記載されていないような細かな注意点、こうすれば音がこう変わるという具体的な方法など、理論と経験に裏打ちされた氏の説明は大変有意義な時間でした。

Vertereはもちろん、一般的なアナログプレーヤーの調整においてもとても勉強になる貴重な時間でした。店頭のVertereも改めて調整し直しておりますので、興味のある方はぜひお問い合わせください。

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