CH Precision C10を聴いてみました

ゼファンさんのご厚意で、マルチビットDACチップにこだわり続けるCH Precision C10を聴かせて頂きました。

先月のインターナショナルオーディオショウで、ゼファン社長AさんとC10の筐体内部が見えるディスプレイを見ながら、昨今のD/Aコンバーターの設計はFPGA方式が多くなってきたなかで、マルチビットDACチップにこだわり、PCM1704 R2R DACチップを16個も乗せたクレイジーな発想について話しを交わしたのですが、よくよく内部を確認すると、それ以外にもこの半導体やパーツ不足の時代に夥しいほどの高品位なパーツが物量投資されていることが把握できていたので、音の期待が高まります。

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天井の蛍光灯が反射していますが、凄まじい物量投資ぶりが窺えます。

ゼファン社長Aさんと設置と接続作業を終え、続いて各設定をしつつ小音量で音出し確認をし、それほど時間も経っていないような状態でも、先ほどまで鳴っていた音とは明らかに違うのが伝わってきましたが、アンプの入力切り替えでD1.5内蔵DACのと音とC10とを比較ができるよう準備し、10~15分経過してから音量を徐々にあげていき試聴に入ることにしました。

まず最初の驚きはDACの試聴だったにも関わらず、まるでパワーアンプを取り替えたか、あるいはスピーカーが大きくなったような変化がみられることでした。

低域方向の重心位置が一気に沈みこんてしまった感じで、楽曲によっては暴力的な低音が地を這うようように鳴り出すほどでしたが、すぐに実は全帯域に渡って壮大なスケールとエネルギーが半端ないほどの速さと密度で迫ってくる鳴り方をしているとわかり、そのためパワーアンプやスピーカーを替えたかのような印象につながったのかもしれません。

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C10 は専用電源部とツインシャーシ設計。電源、アース配置全体を見直した結果、C10mono へのアップグレードは電源部をもう一台追加し、3 筐体構成で完全なC10mono として動作させることが可能に。

いずれにしてもDACを替えたという行為とは別物の変化の仕方で、これだけのエネルギー密度があるのにホールの空気やエコー感、奥行きもしっかり出ており、各パートの演奏の聴こえ方も従来とは次元が違う鳴り方をしています。

鍵盤楽器の打鍵音は滲まず一音一音が屹立しているのに瑞々しく、演奏者の強弱や繊細なタッチははリアリティに溢れ、体験したことのないようなダイナミックレンジ感で、打鍵の音だけでなく響板が空気をよく振動させている雰囲気まで伝わってきます。

管楽器は煌びやかさだけでなくサブトーンやエオリアントーン、タンギングの息使いも生々しく、奏者の違いからくる音色や奏法の違いや個性、エモーショナルさがひしひしと伝わります。驚くべきはフォルテシモ部分でオケ全体が細かいパッセージで演奏しているような運指のとき、タンポがパタパタする音まで埋もれず聴こえてくるほどの解像度もあります。

擦弦楽器でも楽器のボディの厚みからくる音色違いやレガートの艶やかさやもちろん、それこそ擦弦された音も溌剌として生々しく、ピチカートやマルトレ音などもあくまで自然で情緒的で、ギターは繊細なフィンガリングを余すことなく表現し、細やかなニュアンスがよく伝わってきます。

打楽器類も金物・木製系はクリアかつ立ち上が鮮烈で粒立ちもきめ細かく、クロマチック系は打音の際立ちかたと消え入るまでのサスティーンのニュアンスが明瞭で美しく、膜鳴楽器は重く這うような低音成分だけでなく、膜のテンション具合や振動まで見えるかのような印象です。

そして声は存在感、肉声感、叙情感すべてが抜きん出ており、オーディオ的な側面での再現性というより、当たり前ですが“その人がその人の声で歌う”歌として、ちゃんと染み入るように聴こえてきます。ライブ音源でシンガロングの箇所などは、会場で歌っている観客の声を間近で聴いているかのような瞬間もありました。

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専用電源は3つのトランスフォーマー内蔵でキャパシタンス総量はなんと1.5F以上。マルチカスケードディスクリートリニアレギュレータ、重要段にシャントトポロジーレギュレータ採用

CH Precision C10では16個ものPCM1704を採用した理由は、安定性や堅牢性と実績、また音のパワフルさ、そして他社に負けないCH Precision ならではの、PCM1704の扱いに関する蓄積されたノウハウと実績があるからだそうです。

これによりDSPは32ビット固定小数点で、出力ではPCM1704のネイティブ解像度である24 ビットに変換されますが、C10ではまったく新しいDAC アーキテクチャである、DSQ™Phase Arrayトポロジーを採用。デュアル差動トポロジーでチャンネルごとに8個のR2RDACを使用しています。言い換えれば、各チャンネルは各フェーズにつの専用DACチップが割り当てられ、C1.2でもすでにデータ出力レートが16xFs(705.6/768kHz) と非常にパワフルだったのが、C10ではさらにその上を行く64xFs(2.8114/3.072MHz) とのこと。

入力データは最初のチップでサンプル1,5,9, と受信し、2番目のチップでサンプル2, 6, 10, というように順次受信され、このような複雑な処理にはクロックからソフトウェア、ローパスフィルター、電源に至るまで、デジタルからアナログまでの環境全体で信じられないほどの精度と安定性が求められるそうです。
これは非常に難しい仕事ですが結果は想像を絶するもので、驚異的な処理速度により、これまでにない解像度や倍音および音楽情報を提示し、時間領域の要求は従来のDACでは到達できない音楽の編成と透明性、正確なリズムを持って音楽再生に反映されています。

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CH PresitionはPCM1704 に惚れ込み、世界の市場在庫をほぼ買い占めてしまい相当な数を保有しているとのこと。

今回試聴ではSACD、通常のCDとを用いましたが、C10を聴いた感想としては従来の16Bit、44.1kHzフォーマットであっても、実はまだまだ再生しきれていなかった要素がありそれまで録音が悪いと思われていた音源やアナログマスター音源でも、こんな這うような低音が出るのか、こんなに繊細は演奏をしていたのか、またこんなに感情移入して歌っていたのかといったことに気づいたりするのですが、これはMAGICO M9M7を聴かせて頂いたときにも同じような経験があり、オーディオの進化をまざまざと見せつけられた思いです。

CH Precision C10に興味を持たれたは、是非ご相談下さい。

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