U-BOYです。
VERTERE(ヴァルテレ)から新製品のDG-1Sが発売されました。
メーカーからお借りしましたのでレポートします。
DG-1Sは同社のプレーヤーとしては入門機の位置づけですが、他モデル同様、トラジ・モグハダム氏が設計しています。上位モデルの思想を踏襲しており、トーンアームはデザインからも分かる通り、新設計です。
DG-1Sの定価は900,000円(税別)ですが、50,000円追加で、25万円のSABRE MMカートリッジ、35,000円のTECHNO MATが付属する20セット限定のパッケージもございます。
トーンアームは見た目でも分かる通り独創的な構造です。
フラット形状のトーンアームは、接着2重5層無共振ポリマーにより、アームの共振を排除。トップ・ビームとロワー・ビームの接着とリベット留めにより、最適な剛性とリニアな抵抗ダンピングを実現しています。
従来の配線の代わりにフレキシブルPCBをアームに挟み込み、カートリッジから出力端子まで信号をシールドして伝送する事が可能となりました。
そして、このアームの最大の特徴ともいえるアームの支点について。
新たに設計したツイストナイロン(数百本の太さ3ミクロンのツイストナイロン)と高強度ケブラー糸を用いたSilent Thread Bearings(サイレント・スレッドベアリング)を搭載。
水平方向の動きにはツイストナイロンを使用し、垂直方向の動きには2本のケブラー糸を使用することで、過去に使用されていたボールレースやジンバル・タイプのベアリングに変わるシンプルな構造が実現しました。
従来のベアリングのようなスティクション(動きに対する初期抵抗)がなく、超軽量でノイズがありません。加えて、ナイロン糸のねじれが、他の可動部や摺動部なしに軸上でスマートに調整可能なアンチスケート力を提供します。
音質について
試聴は、パッケージセットのSABRE MMカートリッジと、当店で普段使用しているLyraのKleosを使いました。
フォノイコライザーは、MC/MM両方に対応している、Constellation AudioのANDROMEDAを使用しました。
Vertereのプレーヤー全体の特徴としては、鮮度感、音抜けの良さが上げられます。
一般的なアナログプレーヤーの場合、フワッと軽やかだが芯が無い、力感は出るが繊細な表現が難しいなど、一本調子な表現になりがちです。
Vertereは、抑揚がしっかり表現できることが大きな強みです。
また、今回比較したSABREとKleosのカートリッジの特徴の違いも良く出ました。
レンジを欲張らずまとまりの良いSABREに対して、Kleosは鮮度が高く現代的な表現です。
カートリッジのキャラクターをよく表現するのもこのプレーヤーの特徴です。
アームとカートリッジの共振周波数とエフェクティブ・マス(有効質量)をコントロールするための、ウェイトも搭載しています。
同じ針圧1.7gでも、このウェイトを前方/後方にセットするだけで音の表情が大きく変わります。
今回使用した2つのカートリッジの場合、標準の中央の位置よりも、後方にウェイトをセットした方が抜けの良さを保ちつつ、穏やかな表現で好ましいと感じました。
上位モデルと比較すると、空間のスケール感や、レンジ感などに差があるのは事実ですが、カジュアルな外観と異なり、明確な理論に基づき設計されている、本格派のプレーヤーです。